2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K14178
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 亮吉 東北大学, 理学研究科, 助教 (80629759)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 混合時間 / 流体力学的極限 / スピン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
離散無限群上のランダムウォークの研究は有限グラフ上のマルコフ連鎖の混合時間に有用な知見をもたらす。この関連は近年より強まっている傾向があり、本研究の第3段階としてそのような方向の研究を意識的に押し進めることを計画していた。当該年度では統計力学の模型として導入されたグラウバー力学と速い排他過程を重ね合わせたスピン系(De MasiとFerrari, Lebowitzにより1985年に導入されたモデル)を1次元格子上で周期境界条件の下で研究を行った。このモデルは既存の流体力学的極限の結果から1次元においても「相転移」現象を起こすことが期待されているものである。この問題は当該研究者の間ではしばしば予想ともよばれているが、何をもって「相転移」現象を「証明」したことになるかという点は実は曖昧である。これまでの準備的な研究(数値計算によるシミュレーションに基づく)や近年の他グループによる進展などを踏まえ、(全変動距離による)混合時間のオーダーの振る舞いが期待される温度相によって異なることをもって「相転移」を裏付けようという方向性を打ち出した。より正確には1次元格子上で周期境界条件の下では、対応する平均場のモデルの混合時間と同様の振る舞いであるだろうと予想した。(臨界温度相の場合はかなりデリケートなので、予想を裏付ける証拠は依然として不足している。)この問題に対して高温相では混合時間のシャープの評価を得ることが出来た。これが本年度の進捗である。今後は低温相、臨界相の理解を目指して取り組んでいく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画の一部を着実に固める研究を行うことが出来た。一部成果も得られているので、おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の方向性に沿って、スピン系の混合時間については低温相、臨界相と研究を進めていく。高温相では高速混合効果の証明を与えているが、よりシャープな評価が期待できるので、その方向にも研究を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は感染症流行のため予定していた海外出張と国内出張また共同研究者の招聘などをすべて取りやめることになった。そのために計上していた予算はすべて次年度に繰り越すことにした。これらの次年度での使用計画は本年度実行できなかった活動を行うために当てられるものである。
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