2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K14185
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久本 智之 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 助教 (00748345)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ファノ多様体 / ケーラー・アインシュタイン計量 / 安定性 / モンジュ・アンペール方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
2005年頃、Donaldsonは、Calabi汎関数の下限が正規化されたDonaldson-二木不変量により達成されるという予想を提出した。この下限を達成するような代数多様体の退化を最適退化と呼ぶ。 我々はFano多様体の場合にRicciポテンシャルを用いることでこの問題を再定式化し、そこから導かれる計量の時間発展方程式を解析してきた。 今年度は、この定式化に基づき、Donaldsonの予想を解決することができた。 証明のアイデアは、新しく導いた計量の時間発展方程式に付随する乗数イデアル層を用いて最適退化を近似的に構成するというものである。単にDonaldsonの予想を解決しただけでなく、最適退化の構成にもヒントを与えることができた。 また、Kahler-Ricci flowを用いても同じような構成が可能であることを確かめた。この構成はDervan-Szekelyhidiの結果の別証明を与える。特にChen-Wangの理論を必要としないことは特筆すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の狙い通り、新しい定式化に基づいて計量の時間発展方程式を導入し、まさにこの時間発展方程式を利用することでDonaldsonの予想を解決した。この計画は予想以上に早く完了した。それだけでなく、乗数イデアル層を用いる証明のアイデアが、今後の研究にひとつの指針を与えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Fano多様体の最適退化自体が存在するかどうかは未解決であるが、トーリックFano多様体などの特殊な例では存在が確認されている。また、これらの具体的な計算から、最適退化の中心ファイバーは一般化された意味でのKahler-Einstein計量を持つと考えられる。 したがって、それ自身はKahler-Einstein計量を持たないようなFano多様体も、標準計量と結びつけられ興味深い。 特に、このことがFano多様体の双有理幾何においてどのような意味を持つのか。今後はこの点に注目していきたい。 まずは最適退化の具体的計算や、藤田氏の導入したδ不変量との比較を行う。
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Causes of Carryover |
端額のため翌年度の研究備品購入などに用いる。
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Research Products
(6 results)