2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K14185
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久本 智之 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 助教 (00748345)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ファノ多様体 / ケーラー・アインシュタイン計量 / 安定性 / モンジュ・アンペール方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
引き続きFano多様体の最適退化に関する研究を行った。最適退化とgeometric flowの関係について昨年度末にまとめた論文にはいくつか議論に問題があることが分かった。現在はその修正を終え、投稿中である。最適退化の構成についてはまだ具体的な多様体における乗数イデアルの計算等に留まっているが、2017-2019は関連する研究について(主にモジュライ理論の立場から)多くの進展があり、これについて理解を深めた。そのためもあり、今年度は京都大学や東京工業大学で開催された勉強会に積極的に参加した。 また、自己同型群が有限なFano多様体に対しては変分法を用いることで一様K安定性からKahler-Einstein計量の存在を導けることが知られていたが、この議論を一般のFano多様体に拡張した。変分法を実行する上では一様安定性の仮定が必要であり、自己同型群が連続な場合は、まず一様K安定性をどう定義するかが非自明な問題となる。我々は一般の偏極多様体に対して正しい定義を与えることができた。さらに、Kahler-Einstein計量の一般化である満渕ソリトン計量に対しても変分法が適用できることを示した。最適退化を考える上で満渕ソリトン計量は自然な一般化である。これらの結果を論文にまとめ、現在雑誌に投稿中である。 今年度はエコール・ポリテクニク(フランス)に1ヶ月ほど滞在し、S. Boucksom氏をはじめとする関連分野の研究者と議論を深めた。また、これまでに得られた研究結果について国内外の研究集会で講演発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般の偏極多様体に対し一様安定性の概念を拡張し、この定義に基づいて一般のFano多様体で変分法を実行できることを示した。これにより、研究計画の課題にまた1つ肯定的な解答が得られたと言える。一方で、最適退化の構成についてはまだ具体例の計算に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、H. Blum, C. Li, C. Xuといった人々により、代数幾何学の側からのK安定性に対する理解が大きく進んだ。特に、デルタ不変量に関する最適退化がFano多様体上空の素因子から構成できることが示された。また、Fano多様体のアファイン錐において正規化された体積を最小化する付値についても、これが擬単項的であることが示された。これらの結果は、異なる定式化における最適退化と呼ばれるものが、強い有限生成性を持ち、代数幾何学的に構成できる可能性を支持するものである。そこで用いられたアイデアや手法を取り入れつつ、我々がgeometric flowから構成した最適退化を代数幾何学的に構成することを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は物品費に使用する。
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