2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14185
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久本 智之 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (00748345)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ファノ多様体 / ケーラー・アインシュタイン計量 / 安定性 / モンジュ・アンペール方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに当該研究計画が予想外に進んだ。そのため、今年度は主にFano多様体の最適退化を代数的に構成する研究を行った。Kahler-Einstein計量に代表される代数多様体の標準計量はいわゆるK安定性の概念と対応すると考えられている。一方で、標準計量が存在しない多様体を安定な多様体に分解して調べることが重要なテーマとなる。与えられた多様体を安定な方向に退化させるには、K安定性を測る種々の不変量を「最小にする」方向を選べばよい。面白いことに、いずれの不変量もK安定性を特徴付けるにも関わらず、最適退化はそれぞれ異なるものを生じることが分かってきた。今年度は特にKahler-Ricci流と呼ばれる放物型偏微分方程式に対応するH不変量と、H不変量に関する最適退化を台数的に構成する問題を考察した。C. Li氏による付値論的なアプローチを拡張することによりこの問題の解決を狙ったが、これに関しては同氏らのグループに先んじられてしまった。彼らの結果によれば最適な退化はある種の「体積」を最適化する付値によって達成される。そこで、乗数イデアル層を用いた漸近的構成とHormanderによるL2評価の方法を組み合わせることにより最適な付値の有限生成性を証明することを試みた。
今年度は研究実施計画の最終年度ということもあり、これまでに得られた成果を講演発表することに努めた。コロナ禍は向かい風となったが、オンラインで開催された研究集会などに積極的に参加し成果発表の機会を増やした。また、自身の研究成果を含む当該分野の進展をまとめ専門誌に寄稿する予定であり、そのための原稿を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度まで予想以上に研究計画が進んだこともあって、今年度はより挑戦的な問題に取り組むこととなった。また、所属機関の移動や研究以外の業務が増えたこともあり、思うように研究が進まなかった。だが、研究計画全体として見れば概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究実施計画の最終年度であるが、Fano多様体の最適退化に関する研究は引き続き行う。特に、乗数イデアル層を用いた漸近的構成は複素解析的なアプローチの特色と呼べるものなので、この構成による応用を考察していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により出張の予定がなくなったために次年度使用額が生じた。次年度使用額は主に備品や専門書の購入に用いる。
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