2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K14187
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森山 貴之 三重大学, 教育学部, 准教授 (60532554)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ポワソン構造 / 複素接触構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果その1「4次元球面におけるあるポワソン構造のなす空間を決定した。」 これはある幾何構造のなす空間の研究であり、その幾何学構造の変形の研究でもある。ポワソン構造は交代2ベクトルにより定まる。交代ベクトル場は微分形式の双対であり本研究の「微分形式により特徴付けられる幾何構造」を拡張した対象であることからその変形を考えるのは本研究の目的に即している。また、4次元多様体における幾何学構造は数学のみならず物理学的にも非常に重要な研究対象であると捉えられており、様々な分野への応用、関係性の発見が期待できる。具体的な結果として、ポワソン構造のなす空間は非特異な代数多様体であり、定数倍を同一視した空間は射影代数多様体になることが分かった。これはある意味でモジュライ空間が得られ、それが滑らか(変形が非障害)であることを意味している。
研究成果その2「複素接触多様体における交代ベクトル場の分解定理、及びそのコホモロジーの消滅定理を示した。」 より正確に述べると交代ベクトル場の空間をある特殊な交代ベクトル場のなす空間とある線束値交代ベクトル場のなす空間とに分解した。応用としてこの特殊な交代ベクトル場のなすコホモロジーの消滅定理が得られる。このコホモロジーは複素接触多様体に付随する幾何構造のコホモロジーであるため、その幾何構造の変形、及びモジュライ理論を展開する上で自己同型の空間、無限小変形空間、障害の空間として現れる。よって、そのコホモロジーの消滅定理は複素接触多様体に付随する幾何学構造の変形の非障害、剛性、安定性における結果の重要な道具となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の目標として剛性の判定を挙げていたが、剛性とは変形のモジュライ空間の次元(これはあるコホモロジーの次元で記述される)が消えることを意味する。今年度得られた結果の1つである複素接触多様体のベクトル場の分解定理、及びそのコホモロジーの消滅は複素接触に付随する幾何構造の剛性に直結する結果である。特に四元数ケーラー多様体のツイスター空間は複素接触構造を持つため、四元数ケーラー多様体上の幾何構造の変形、剛性の判定のための道具が準備できたことになる。安定性についての結果を得ることができなかったが、4次元球面上の特定のポワソン構造の集合が滑らかな多様体であるという結果はその変形の非障害性を意味し、これは次年度以降に予定していた非障害性の研究が前倒しとなった形である。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な幾何構造の変形の非障害性、剛性についての条件を調べる。特に4次元球面上の特定のポワソン構造の集合が滑らかな多様体であるという今年度得られた結果はある意味で変形の非障害性を表しているが、更に微分同相群で同一視した変形が非障害か、剛性を持つかといったことが今後の課題となる。4次元球面は四元数ケーラー多様体となることが知られており、そのツイスター空間は複素接触多様体となることから、複素接触多様体におけるコホモロジーの消滅定理が変形の非障害性、剛性に応用できると考えている。更にそれらの結果を四元数ケーラー多様体上のポワソン構造の変形、及びモジュライ理論にまで拡張するというのが次年度の目標である。
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Causes of Carryover |
3月1日に行った研究打ち合わせを当初は3月2日も行う予定であったが先方の都合により1日のみとなった。このため1泊2日の出張が日帰り出張となったしまったため1日分の宿泊費及び日当が余る形となった。次年度に同じ方とこの分の打ち合わせを行う予定である。
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