2017 Fiscal Year Research-status Report
Geometric analysis on asymptotically symmetric spaces and parabolic geometries
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17K14189
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 佳彦 大阪大学, 理学研究科, 助教 (00710625)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リーマン幾何学 / アインシュタイン方程式 / 共形幾何学 / CR幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
漸近的対称空間にはさまざまな種類があるが、本研究においてもっとも基本的な対象となるのは漸近的複素双曲空間(ACH空間)である。初めの課題としたのは、ACH空間であってアインシュタイン方程式を満たすようなもの、すなわちACHアインシュタイン空間に存在すると考えられる、一種の複素構造(正確には概複素構造)についての考察であった。 候補となるような数種類の概複素構造に関する直接的な検討を行い、また研究協力者との議論を行っている。それと並行して、作業仮説を検証するためのテストケースとして用いることを意図して「ACHアインシュタイン空間であって、特に大きな対称性を持つものを構成する」というアプローチに取り組み、これには明確な進捗があった。構成にあたり生じる困難を具体的に把握するために、漸近的双曲アインシュタイン空間(AHアインシュタイン空間)も合わせて考えることにして、複数の手法を検討したところ、AHアインシュタイン空間についてはある手法が特に有効であることがわかり、結果としてPedersenによる構成(1986年)の高次元化が得られた。ACHアインシュタイン空間には現時点ではより原始的な手法しか通用せず、その効力も限定的なのであるが、引き続き研究を進めている。 この他、ACHアインシュタイン空間に関する研究の世界的な状況について、韓国多変数関数論シンポジウム報告集にサーベイ論文を寄稿した。また、国内およびアメリカ(2017年8月より滞在)の複数の大学のセミナーや、メキシコで開かれた「The Third Pacific Rim Mathematical Association Congress」、東京で開かれた「Geometric Analysis in Geometry and Topology 2017」において、関連する内容の講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2017年度中に「ACHアインシュタイン空間に存在すると考えられる一種の複素構造」の具体的な決定を完了する予定であった。これは文字通りの形では達成されていない。しかしそれに向けた基礎的な知見は着実に得られていて、困難をより適切に把握できるようになっており、目標には確かに近づいているものと考える。さらに、「研究実績の概要」欄で述べたPedersenによる構成の高次元化は、研究開始時点では予期していなかった興味深い副産物である。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」欄で述べたテストケースの構成に向けたアプローチには、ACHアインシュタイン空間への適用に関して追求の余地があり、その研究をさらに展開する。また、ACH空間の場合における「一種の複素構造」に相当するものを、本研究ではより一般の漸近的対称空間について考察することを予定しているが、これも2018年度より開始する。 多くの研究者から協力を得られるよう手配する。研究開始以来、その候補となるような新たな研究者とのやりとりも始めており、これを議論の機会を多く確保することにより活かす。
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