2018 Fiscal Year Research-status Report
埋め込み解析とホモトピー代数を用いた埋め込みの空間の研究
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17K14192
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
森谷 駿二 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (40583464)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多様隊の中の結び目 / コホモロジー群 / オペラッド |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は2017年度から継続して,可微分多様体の中の結び目のなす空間のコホモロジー群に収束するスペクトル系列について研究した.上記の空間のコホモロジー群を一般的に調べようとする試みは,Vassilievによってなされているが,コホモロジー群そのものに収束するようなスペクトル系列ではなく,またE2項も複雑である.応募者は近年のGoodwillieらの埋め込み解析を応用した研究を行っている.埋め込み解析の応用は盛んにおこなわれているが,ほとんどの研究は多様体からユークリッド空間への埋め込みの空間に関するものであり,さらに実数係数に限定したものである.応募者のスペクトル系列はこれらの範疇に入らない,多様体への埋め込みの空間について,しかも任意票数の体係数まで視野に入れているという点で他に類を見ないものである.2017年度にスペクトル系列の原形は粗くではあるが構成できていた.2018年度はこのスペクトル系列について,ある条件の下で代数的な表示を得た.具体的には,多様体のオイラー数が係数環で0か可逆の場合には,E2ページが多様体のコホモロジー環の情報だけで記述できるというものである.特に係数環が体の場合にはこの表示は常に適用できる.この表示に基づいて,多様体が球面や球面の直積の場合にスペクトル系列のE_2ページの計算を行った.特に球面の直積の場合は本質的に新しい結果が得られたと思われる.スペクトル系列の構成の仮定で,Atiyah双対性のR.Cohenによる精密化を用いてる.このようなAtiyah双対性(の精密化)の応用はこの分野では例がないが,配置空間の研究に今後役立つのではないかと考えている.この研究についての論文は執筆中である.また,高知ホモトピー論談話会において,研究発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要でも述べたように,これまで,あまり研究されてこなかった,多様体の中の結び目の空間についてそのコホモロジー環の計算に向けた一般的な枠組みができたという点で進展があったことが理由である.より細かく述べると,まず前年度までの構成で不備があった点を修正できた点,さらに,前年度に構成していたスペクトル系列のE2ページはまだ複雑な幾何学的な情報を含んでいたが,その情報を分析することによって,すべて多様体自体のコホモロジー環というわかりやすい方法で記述できることが分かった点,また,計算例を拡張することによってこの手法の適用範囲がより明確になった点で大きく進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
球面などの具体例についてスペクトル系列のE2ページの計算の結果見えてきた課題としては,筆者が構成したスペクトル系列は一般に(有理係数であっても)E2ページで退化しないということである.そのため,さらに精密な計算をするためには,スペクトル系列に情報を付加していくことが必要である.一つは積構造である.スペクトル系列の母体となっている.余単体的対象スペクトラには積構造を導入することができるので,スペクトル系列にこれを誘導するような枠組みを構成すればよい.これにはRichterとShipleyによる対称環スペクトラと微分次数付き代数との同値性が大いに参考になると考えられる.また,スペクトル系列を相対的に研究することも重要である.このため現在できているスペクトル系列は1次元の円周から閉多様体への埋め込みの空間に対してのみであるが,これを閉区間から境界付多様体への端点が固定された埋め込みに対しても同様のスペクトル系列を構成し,long knotのようなよくわかっている空間からより一般の空間へ情報を伝達することを計画している. また,コホモロジー環の計算のような定量的な問題のほか,dichotomyの問題への応用なども検討している.dichotomyとは,long knotで有理係数において知られている現象である.筆者のスペクトル系列は対象スペクトラの段階である種の分解を持っているため,正標数係数でもおそらく成り立つだろうdichotomyへのアプローチに適している.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,参考にする文献のうちインターネットでダウンロードできる文献が多くの割合を占め,書籍購入費が予想より少なかったこと,一度誤りと思っていた結果を研究集会において発表してしまったため,本年度は慎重を期し,証明の細部の詰めが終わるまでは研究発表を控えていたため出張が減ったことが挙げられる.(誤りの修正は完了した.)また,生活費を賄うための仕事が予想外に忙しくなったことも挙げられる.今後はより広い視野を持つために,関連する広範囲の知識を収集する必要があるので関連する書籍は積極的に購入する予定である.また,研究業績の証明はよりしっかりしたものとなったので,次年度では研究発表を多く行う予定である.また,ピンポイントでも興味深い研究集会に参加し,見聞を広める予定である.
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