2019 Fiscal Year Research-status Report
埋め込み解析とホモトピー代数を用いた埋め込みの空間の研究
Project/Area Number |
17K14192
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
森谷 駿二 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (40583464)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | オペラッド / 四次元以上の空間における結び目 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2019年度)も前年度から引き続き,多様体の中の結び目の空間のコホモロジー群の研究を進めた.特に,多様体が球面の直積や4次元多様体などの場合にコホモロジー群の低い次数の部分を計算した.特に4次元多様体の場合,ホモトピー群についてはArone-Szymikによって定性的な研究がされているが,コモロジー群について最低次以外が決定できた例はおそらく初めてである.これらの計算は前年度に構成したスペクトル系列を用いたものであり,この構成を含めて論文にまとめた.論文は他の研究者の意見を聞いて現在改訂を進めており,近いうちにarXivなどで公開し,論文誌に投稿する予定である.この研究について日本数学会秋季総合分科会で発表した. この論文のコホモロジー群の計算はスペクトル系列のE2-項(第2近似)の情報からわかるもののみにとどまっているが,本年度後半からスペクトル系列の背後にある構造(高次構造)の研究に着手した.これにより,コホモロジー群のより詳細な情報がわかると期待される.手始めとして,long knot module immersion と呼ばれる,最も簡単な結び目の空間について考察した.この場合上記の高次構造はかなり扱いやすく,この構造に関して任意係数において形式性(formality)が成り立つだろうと予想し,その証明の概略を得た. 他にもString topology において基本的なCohen-Jones同型の証明のギャップを発見し,それを埋める研究を行った.このためにMcClure-Smithによるホモトピー代数を構成する枠組みを拡張した.Cohen-Jones同型は多くの論文で引用されているが,その証明は概略しか与えられておらず,この研究は基本的な意味で重要である.この結果を論文にまとめ,投稿した.現在査読中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スペクトル系列の計算において,具体例と一般論の両方において新規性があり,広く興味を持たれると期待される結果が得られた.また,当初は主に有理数係数で対象を結び目から一般の埋め込みの空間に広げる研究を想定していたが,整数を含む任意係数で基本的な結び目の空間への応用の見込みが見えてきた.つまり,当初の想定とは異なるがより大きなインパクトがある方向に研究が進んでいる.方法論としてもより新規性があり発展性が見込めるものが見えてきた.また,論文数としても,前年度以前から作成していたものではあるが,50ページ超の論文を2本執筆し,プレプリントサーバーarXivにアップロードした.よって,おおむね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はまず,上にも述べたlong knot modulo immersion の空間のモデルのformalityの研究を進める.これまでの筆者の研究で,この空間の特異コチェインをあるThomスペクトラの特異チェインの図式のホモトピー余極限として表せることが分かった.今後はこのモデルの技術的な部分をさらに簡略化することを目指す.その上で,これまで実数係数上で配置空間積分を用いて行われていた構成を参考にformalityのquasi-isomorphismの構成を目指す.quasi-isomorphismの構成が困難な場合は,formalityに対する計算可能な障害類の構成を目指す.この研究にある程度見通しが付いたら,配置空間の代数的モデルの研究を並行して進める.配置空間の代数的モデルはIdrissiやWillwacherらによって研究されてきた.これらの研究はKontsevichの配置空間積分に基づいており,興味深いものである.一方でこのような超越的な方法を用いないよりホモトピー論的な方法があれば,他の補空間や正標数への応用も見込める.筆者が結び目の空間に対するスペクトル系列の構成で用いた最も根本的なアイデアは,配置空間上の構造をfat diagonalの方にPoincare双対性を通して移植するというものであり,これは代数的モデルの構成にも役立つと期待できる.枠組みとしては,RezkのFrobenius Pairの概念のhomotopy coherency版を想定しており,このhomotopy coherency版の機能する定義を与えることがこの研究で最初の主な課題となる.次に,有理係数におけるこの概念とPoincareDG代数との関係,正標数における研究などを行う.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,論文執筆に想定以上の時間を取られ,研究集会参加・発表があまりできなかったことと,covid19により,参加を予定していた研究集会が中止になったことが挙げられる.20年度もcovid19により先が見通せない状況であるが,オンライン研究集会参加や研究環境向上のため,パソコンやソフト,書籍の購入をする予定である.
|