2020 Fiscal Year Research-status Report
組み合わせ的手法による低次元シンプレクティック多様体の研究
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17K14194
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
早野 健太 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20722606)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レフシェッツペンシル / ブレイドモノドロミー / 消滅サイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は代数曲面上の線形形式のモノドロミーを調べるMoishezon-Teicherの理論を、複素射影空間に適用できるよう一般化することにより、複素射影空間上の2次のペンシルのモノドロミーを決定する試みを行った。複素射影空間のモノドロミーを完全に決定するには至らず、具体的な成果として発表することはできなかったが、以下に記載の通りMoishezon-Teicherの理論を適用するうえで必要な準備をいくつか行うことができた。 Moishezon-Teicherの理論は代数曲面の変形を考え、線形に埋め込まれた複素射影平面の族にまで退化させ、最終的に現れた平面配置のモノドロミーと、それぞれの退化でのモノドロミーの変化の規則を調べることにより、元々の代数曲面上のペンシルのモノドロミーを決定する、というものである。この手法を複素射影空間に適用するためには、まずVeronese埋め込みにより埋め込まれた複素射影空間の、線形な複素射影空間の族への退化を与える必要があるが、本年度はこの退化を見つけることに成功した。さらに退化により最終的に現れる、線形な複素射影空間の族のモノドロミーも決定した。得られた退化からVeronese埋め込みで埋め込まれた複素射影空間のモノドロミーを得るには、得た退化の各過程で起こるモノドロミーの変化の規則を調べる必要がある。これらの規則のうちいくつかは本年度に理解することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複素射影空間上のペンシルのモノドロミーを得るという目標は申請当初の研究計画にも含まれていたものである。研究実績の概要でも述べた通り、行うべきことを完全に遂行できたというわけではないが、扱うべき問題のいくつかは解決できており、目標に向かって着実に進んでいるといえる。とはいえこの組み合わせ的表示を得た後に試みる予定であった、他の3次元代数多様体上のペンシルのモノドロミーの決定や、それらを理解することにより見えてくるであろう、組み合わせ的表示と実6次元多様体の種々の手術との関係の解明などには全く手を出せていないのが現状である。以上の事情を踏まえて、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた通り、Moishezon-Teicherの理論を複素射影空間に適用するための準備のうち、いくつかは本年度で行うことができたので、今後は残されている問題を解決し、まずは複素射影空間上のペンシルのモノドロミーを決定したい。これができれば次に同様の手法を用いてHirzebruch曲面の一般化ともいえる、有理曲面上の射影直線束上のペンシルのモノドロミーの解明にも取り組みたい。以上が完遂できれば基本的な実6次元シンプレクティック多様体の、写像類群による組み合わせ的表示が得られることになるので、組み合わせ的表示と手術との関係を明らかにすることにより、他の6次元シンプレクティック多様体を得ることも目指す。また組み合わせ的表示を得る際の副産物として、4次元シンプレクティック多様体の写像類群の関係式も得られるが、この関係式の応用も模索したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により予定されていた研究打ち合わせ、出張等が全てキャンセルされ、このために確保していた予算が全て未使用のまま残ることとなった。 次年度は状況が許せば積極的に研究打ち合わせを行い研究を進展させ、対面での研究集会に参加して成果を発表する予定である。また研究遂行に必要となる図書の購入も行う予定である。
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