2017 Fiscal Year Research-status Report
On rigidity of foliations on 3-manifolds
Project/Area Number |
17K14195
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野澤 啓 立命館大学, 理工学部, 准教授 (80706557)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 葉層構造 / 3次元双曲多様体 / 剛性理論 / 低次元トポロジー / モース関数 / 特異点 / 特性類 / 微分位相幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.円周上の曲面束の上のトートな葉層構造の新たな例を構成した. Meigniezの例と呼ばれる円周上の曲面束の上のトートな葉層構造の例が知られており, 円周上の曲面束上の自然な葉層構造として重要である. 本研究において, Meigniezの例の前提条件を一般化した形での構成が可能であることを示した. より具体的には, 曲面Fの微分同相fをモノドロミーとするような円周上の曲面束について, Meigniezはfによって定数倍となるようなF上の閉1形式kが存在するときに, kを用いてM上の葉層構造を構成した. 本研究の代表者はGilbert Hector氏と共に, fによって定数倍となるようなF上の1次のコホモロジー類が存在するときに, Moserの補題と呼ばれるよく知られた定理を用いることで同様の構成が可能となることを示した. Meigniezの例は横断的なアファイン構造を持つ上に、片側分岐したトートな葉層構造の初めての例であったが、この例も同様の性質を持つ. 2.上記で構成した円周上の曲面束Mの上のトートな葉層構造の例Fについて, 中山がMeigniezの例について証明した剛性が一般化した形で成り立つことを示した. つまり, M上の横断的にアファインな葉層構造であって, オイラー類が極大であり, ホロノミー準同型がFに等しいものは, 1.で構成した例にアイソトピックになることを示した. 3.Martelli-Sparks-Yauにより佐々木多様体のReeb流のレフシェツ数はその体積と関係することおよび体積は佐々木Einstein計量の場合に極小となるという剛性が成り立つことが示された. ただ, 彼らの議論は収束性を無視した形式的な部分があることから, 収束性について考察し, Reeb流の閉包として得られるトーラスの複素化の作用を用いて収束性を正当化するアイディアを得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の欄において記述した通り, 円周上の曲面束上で曲面束の構造を自然に反映するような新しいトートな葉層構造の例を構成し, それらの剛性を示することができた. 本研究の目的は3次元双曲多様体上のトートな葉層構造の有限性・剛性を上手く定式化して示すことであるが, これまでに得られた結果はおよそ横断的にアファインな構造を持つような葉層構造という良い対象に限った中で現れる剛性に関するものである. その証明は一般のトートな葉層構造へと一般化しうるような技術を多く含んでいる. 大まかには与えられた横断的にアファインな構造を持つ葉層構造をホロノミーに関する条件の下でアイソトピーで変形し, 与えられたベクトル場に横断的になるように変形する第一のステップと, 与えられた横断的にアファインな構造を持つ二つの葉層構造が共通の横断的なベクトル場を持つときの互いに移しあうアイソトピーの構成を行う第二のステップに分かれる. 第一のステップではGと曲面束のファイバーの接点集合について深く考察を行った. 具体的には, Gを曲面束のファイバーたちに対して一般の位置においた場合に現れる接点集合の局所的な構造の分類および場合によっては接点集合のある部分を解消するためのアイソトピーの構成を行った. これらは一般のトートな葉層構造についても多くの部分が成り立つ議論であり, 一般のトートな葉層構造の剛性の定式化・証明においても有用であることが期待される. また, その議論はCerfの定理と呼ばれる深い定理を援用するものであり, 素手では難しいような内容を含むものである. 佐々木多様体のReeb流のレフシェツ数に関する研究も複素化を用いることで収束に関する議論を完了し, 進行している. 以上のことから, 本研究は目的に向けて順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
1.今年度得られた結果の一般のトートな葉層構造への拡張を模索する. 具体的には, トートな葉層構造Fであってそのオイラー類が極大なものおよび曲面束に横断的なベクトル場Vが与えられたとき, Fをアイソトピーで変形してVに横断的にできるかどうか考察する. 知られている曲面束上のトートな葉層構造の非常に多くの例はこのような状況である. 今年度得られた結果から, 残るのはRoussarieがb型と呼んだ接点がオイラー類とは逆の符号を持つときに, アイソトピーによって消去できることを示す部分である. 2.接触アノソフ流であって, その安定葉層構造, 不安定葉層構造がともにC^{1,1}級であるようなものの分類について考察する. Ghys, Benoigt-Foulon-Labourieらにより, 多様体が3次元の場合には安定葉層構造, 不安定葉層構造がC^2級であるという条件, 多様体の次元が3次元より大きい場合には安定葉層構造, 不安定葉層構造が十分に大きい微分可能性を持つという条件の下で, 接触アノソフ流は実階数1の局所対称空間上の測地流にパラメータの変形の差を除いて共役であることが示されている. 金井によって, 接触アノソフ流がある非正定値な計量を保つことが示されている. この流れを枠束に持ち上げることで, ある枠を保つような流れfを得ることができる. この場合にリーマン葉層構造のMolinoの理論などを用いてfの等質性を示すことを目指す. 3.佐々木多様体のReeb流のレフシェツ数については, 実際にMartelli-Sparks-Yauの体積を与える公式の証明について考察する.
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