2017 Fiscal Year Research-status Report
ケーラー多様体上のモンジュ・アンペール方程式と正則曲線への応用
Project/Area Number |
17K14200
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
千葉 優作 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90635616)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複素モンジュ・アンペール方程式 / 多重劣調和関数 / 正則関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は擬凸領域上の多重劣調和関数のなすモンジュ・アンペールカレントとの台集合と正則関数の拡張について研究した.結果として複素4次元以上の擬凸領域では滑らかな多重劣調和関数のn-3次のモンジュ・アンペールカレントの台集合の近傍で定義された正則関数は,その擬凸領域全体に拡張できることが証明できた.ここでnは考えている擬凸領域の次元としている.これはハルトークスの拡張定理に対して,より解析的,幾何的な解釈を新たに与えるものといえる.ハルトークスの拡張定理とは2次元以上のある領域を与えると,その上の正則関数がより広い領域上の正則関数に拡張できることを主張する定理である.この定理は多変数関数論研究初期の最も重要な定理の一つで,1次元の関数論との決定的な違いを示している.今回研究者が得た結果は,少なくとも4次元以上,擬凸領域に限ればハルトークスの拡張定理を導くことが可能で,さらにハルトークスの拡張定理では扱うことのできない,一部の境界付近で定義された正則関数の拡張を可能にする.そのため多変数関数論における基礎的な部分に関わる結果を得られたのではないかと考えている.またこの結果は擬凸領域の境界においてレビ平坦と呼ばれる部分は,本質的には(少なくとも正則関数を拡張する際には)それほど重要ではないことを示しており,レビ平坦な境界をもつ領域の研究に寄与するといえる.また今回の結果がより精密化されれば,つまりn-3次ではなくn-1次のモンジュ・アンペールカレントで証明できれば,さらに滑らかでない連続な多重劣調和関数に関して証明できれば,凸な管状領域上への正則関数の拡張を導くものと思われる.つまりハルトークスの拡張定理と管状領域上の拡張定理を統合するような,一般の拡張定理の存在が示せるのではないかと期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標はケーラー多様体上のモンジュ・アンペール方程式と正則曲線の関係を調べることであったが,今年度は領域上の複素モンジュ・アンペール方程式,特にその台集合と正則関数の拡張に関して性質を調べることができた.この結果はケーラー多様体上の局所的な性質を調べたものといえる.ケーラー多様体上のモンジュ・アンペール方程式を研究し正則曲線へ応用する際への大きな一歩といえる.また今回の研究で得た証明方法は既存の評価付きコーシー・リーマン方程式の解法を改良したもので,今後の研究においても再び利用できるもので,さらなる進展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針は現在3つほど考えられる.一つは29年度の研究をさらに精密化することである.29年度の研究ではn-3次のモンジュ・アンペールカレント,滑らかな多重劣調和関数という制約がついていたが,これを最良の結果,すなわち単に連続な多重劣調和関数のn-1次のモンジュ・アンペールカレントに対して証明するということを目指す(その意義については研究実績の概要参照).2つ目の方針は29年度の結果で得た証明方法を使って擬凸領域上のモンジュ・アンペールカレントの台集合の,さらなる幾何学的な性質を調べることである.3つ目は29年度の結果をケーラー多様体上で証明することである.この場合は豊富な線束上の計量からなるモンジュ・アンペールカレントの台集合と正則切断の拡張の関係を調べることとなる.
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