2019 Fiscal Year Research-status Report
ケーラー多様体上のモンジュ・アンペール方程式と正則曲線への応用
Project/Area Number |
17K14200
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
千葉 優作 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90635616)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多重列調和関数 / ベクトルバンドルのコホモロジー / 正カレント |
Outline of Annual Research Achievements |
スタイン多様体において多重劣調和函数のヘシアンの台集合において、その上のベクトルバンドルのコホモロジーの消滅を証明した。さらに射影代数多様体においてアンプルな線束のChern類に属する正カレントの台集合上のコホモロジーが全体の空間のコホモロジーと、低次では一致することを示した。これらはde Rhamコホモロジーに関しても証明でき、レフシェッツ超平面定理の、代数的でない場合へと拡張したものとみなすことができる。さらに2019年度の結果の次数を1だけ改良することができた。この改良は、二つの結果による。第一は二乗可積分な関数のdバー方程式を解く際の、解の評価の改良である。これは2017年度に研究した正則関数の拡張定理において、その証明が他の研究者により改良され、それを参考にすることで可能となった。第二に解の滑らかさをソボレフノルムを用いて証明した事による。方程式を解く際に無限個のウェイト関数を用いるため、既存の研究結果では示すことができなかったが、特殊なウェイト関数を発見することで可能となった。またソボレフノルムの評価において、スタイン多様体におけるコンパクトな台をもつコホモロジーの消滅に関するdバー方程式の解の滑らかさも証明した。これは副次的なもので、以前にも知られていたかもしれないが、その証明としては新しいものを与えたといえる。 今回の研究についてトーリック多様体でいくつか例を構成した。その結果、トーリック多様体のモーメント写像によって、正カレントの台集合を記述し、そのコホモロジーを計算することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に証明した擬凸領域上の結果を順調にスタイン多様体、射影代数多様体の場合に拡張できた。さらにはベクトルバンドルのコホモロジーへの一般化もできた。これらの結果は複素幾何において新しい方向性を示すのではないかと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られた結果をさらに深く追求をしたい。具体的にはコホモロジーの次数に関する改良、アンプルクラスでなくより一般なクラスへの改良などが考えられる。また他の分野への応用も視野に入れたい。正カレントで定理は示されているので複素力学系やネヴァンリンナ理論といった代数的ではない設定において、応用することが可能と考えられる。またトーリック多様体やトロピカル幾何といった代数幾何でどのようになるかも研究する。
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