2020 Fiscal Year Research-status Report
ケーラー多様体上のモンジュ・アンペール方程式と正則曲線への応用
Project/Area Number |
17K14200
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
千葉 優作 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90635616)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トーリック多様体 / カレントの台集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は射影代数多様体上のコホモロジーと正閉カレントの台集合について研究した。2020年度以前は射影代数多様体やシュタイン多様体上の正則ベクトル束と正閉カレントの台集合が関連していることを示した。ただし正閉カレントは、整係数コホモロジーを与えるという仮定が必要である。この研究は古典的なレフシェッツの超平面定理をカレントという超越的な状況で考えたものということができる。なぜならば、射影代数多様体の超曲面は整係数コホモロジーをもつ正閉カレントの台集合で与えることができるためである。超曲面に比べて正閉カレントの台集合は計算が難しく、その図形的な性質を捉え難い。そこで今年度は射影代数多様体上の正閉カレントの台集合を超曲面意外で具体的に構成した。構成した例は、主にトーリック多様体上でである。トーリック多様体は整凸多面体に対応して構成される。さらに整凸多面体はトーリック多様体上の豊富な線束を与える。この線束には整凸多面体から自然に正値な特異計量が存在して、その特異計量の与える正閉カレントがトロピカル超曲面になることを示した。またこのようなトロピカル超曲面と周期写像の関係について研究した。トロピカル超曲面は離散数学や代数幾何学などさまざまな代数的分野と関連し、そのコホモロジーが多変数関数論という解析的・幾何的手法を用いて示されることは大変興味深い。またこの研究のシュタイン多様体上の類似として代数トーラスでも同様の結果が成り立つことを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主題の一つであったモンジュ・アンペールカレントについて次の二つのことを示すことができた。一つはモンジュ・アンペールカレントの台集合の近傍上で定義された正則関数の拡張定理である。これはハルトークスの拡張定理にちかいものではあるが、既存の研究にはない新しい拡張定理であった。二つ目はモンジュ・アンペールカレントの亜種として、正閉カレントの台集合の交わりと、それが定義されている空間のコホモロジーとの関連である。この定理は古典的なレフシェッツの超平面定理に超越的な方向性を与えたと言える。これら二つの定理でモンジュ・アンペールカレントやモンジュ・アンペール方程式の性質を深く研究することができ、大きな進展と言える。しかしもう一つの主題である正則曲線については目覚ましい発展はなかったため、進捗状況の区分を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
正則曲線の性質を研究するために、アールフォルスカレントの台集合を調べる。アールフォルスカレントは正則曲線に付随した正閉カレントである。もし正閉カレントが整係数コホモロジーを与えるならば、これまでの研究で正則曲線が定義されている射影代数多様体のコホモロジーと関連していることがわかる。しかしそうでない場合はこれまでの研究の結果を使えないために新たな研究手法を開発する必要がある。ただアールフォルスカレントというかなり特殊なカレントであるため、整係数コホモロジーを与えなくても、ネヴァンリンナ理論や小林双曲性の性質を用いることで、詳しく研究できないかと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスによる影響で当初の研究計画通りにいかなかったため。使用計画としては研究集会への旅費や研究打ち合わせのための研究者の招待、電子機器の整備を考えている。
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