2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K14204
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠岡 誠一郎 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20646814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 確率微分方程式 / 確率偏微分方程式 / 確率量子場モデル / マリアヴァン解析 / ディリクレ形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は指数型相互作用を持つ確率場の確率量子化として現れる特異確率偏微分方程式の解の存在と一意性、さらにその定常測度についての研究を主に行った。この指数型相互作用を入れた確率量子場モデルはHoegh-Krohnモデルとも呼ばれる。この特異確率偏微分方程式は、近年世界中で盛んに研究されている繰り込みが必要な確率偏微分方程式の1つである。この研究においては、この研究課題において行った3次元トーラス上のΦ4確率量子化モデルの研究の際に使ったLp空間においてのアプローチを応用している。相互作用が多項式で書かれるものであればL∞空間を用いたアプローチが有効であるが、この指数型相互作用の場合は可積分性が非常に悪くなり、L∞空間を用いたアプローチは難しい。そこで、今年度はL2空間の枠組みでこの特異確率偏微分方程式へのアプローチを行った。その結果、解の存在と一意性、その定常測度の構成に成功した。さらに、ディリクレ形式を用いたアプローチとの整合性も得られた。この研究結果は既に論文として投稿し、現在査読中である。 その後、このアプローチをL1空間の枠組みで行っている。L2空間はガウス場との相性が良く扱いやすいが、L1空間と比べて可積分性が求められるため、チャージ定数と呼ばれるパラメータの範囲により強い制限が加わる。そこでチャージ定数の範囲を広げるため、L1空間の枠組みで同様の議論が通用するかについて引き続き研究を行っている。この研究においては指数型のWick積が現れるが、チャージ定数がL2空間で扱える場合と扱えない場合によってその性質が大きく変わることまで分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は確率微分方程式に対する研究は遅れているが、非線形確率偏微分方程式に対する研究は当初の計画以上に進展している。ここで考えている非線形確率偏微分方程式は特異確率偏微分方程式に当たるが、世界中で盛んにおこなわれているRegularity StructureやParacontrolled Calculusを用いなくてもその繰り込みの原理さえ取り入れれば有限次元の確率微分方程式にを用いた近似でも同じような結果が得られることが分かった。そのため、それらの理論のために必要な枠組みにこだわる必要がなくなり、昔から行われている確率微分方程式を用いた解析によって様々な結果を導くことができている。この部分については十分に研究が進んでいる。 また、その先の方針についても明確となっており、引き続き指数型相互作用を入れた確率場モデルや3次元空間全体におけるΦ4確率場モデルについて研究を進める。 以上の理由から、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き指数型相互作用を持つ確率場の確率量子化として現れる特異確率偏微分方程式を、L1空間の枠組みでアプローチを行うことを考える。L1空間においては元の積がそのままでは定義できないため、L2空間において議論できる場合と比べ、大きく議論を変更する必要があると考えている。繰り込みを伴う確率偏微分方程式の解析には、負の正則性を持つベゾフ空間などを用いる必要があるため扱える手法が限られているが、引き続きこれまでの議論の修正を行いながらこの問題に取り組む。 また、3次元の全空間におけるΦ4モデルの確率量子化として現れる特異確率偏微分方程式の解と定常測度の構成についても引き続き研究を行う。この場合は重み付きベゾフ空間を用いた議論が必要となるが、重み付き空間においてはラプラス作用素が対称にはならないため、その部分の議論の修正が必要である。そのためには適切なクラスに属する重みを考え、その空間における関数不等式を用意する必要があると考えている。引き続き適切な関数不等式について考え、この問題にも取り組む。 さらに、これらの特異確率偏微分方程式から得た知見を基に、これまでに扱えなかったような新しい枠組みでの確率微分方程式について考える。確率偏微分方程式は無限次元の確率微分方程式と考えることができるが、この特異確率偏微分方程式の議論が無限次元特有のものであるかどうかは現在のところよくわかっていない。そのため、特異確率偏微分方程式の議論を踏まえて、改めて確率微分方程式の枠組みについて考察を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により3月の研究集会がキャンセルとなり、さらに出張を控える必要が生じたため、3月に予定していた旅費の分未使用額が生じた。 今年度は出張が可能になったら共同研究のためドイツのボン大学を訪問したいと考えている。また、国内の研究者との研究打ち合わせや情報交換も行う予定である。これらの出張費として研究費を使用したいと考えている。 出張が可能となるまではオンラインで研究打ち合わせを行う必要があるため、タブレット型PCなどの購入する。出張が出来ない期間が長引いた場合は、オンラインでの研究打ち合わせを効率よく行うために必要な書画カメラなどを購入する。また、書籍の購入も行う。
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Research Products
(9 results)