2018 Fiscal Year Research-status Report
確率的に時間発展する平面領域を記述するためのレブナー理論の基礎的・応用的研究
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17K14205
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
堀田 一敬 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (10725237)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レブナー理論 / 等角写像 / 擬等角写像 / 確率微分方程式 / シュラム・レブナー発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下のような研究を行った. 1.複数本のスリットを像領域に持つような等角写像に対して,スリットの本数を無限にしたときの写像の挙動の研究を引き続き進めた.昨年度まではchordalの場合における極限関数と,その関数が満たす微分方程式を得る事ができたが,本年度はradialの場合に対しても類似の結果が得られることを示した.また,全てのスリットが円周の1点から伸びる場合の制御関数の挙動の可視化も行った. 2.任意の等角写像はあるLoewner chainの初期値に埋め込めることは古典的に知られているが,ある仮定を満たすようなLoewner chainに対してどのような等角写像を埋め込める事ができるのか,その詳しい性質はあまり知られていない.そこで本年度は,時間に関して常に微分可能であるようなLoewner chainに埋め込めるもの,および埋め込めるloewner chainが一意に定まるようなものに関する研究を行った.両者ともにスリット領域が深く関係してくることがわかった. 3.近年,非可換確率論とレブナー方程式との関係が注目を浴びている.これに関連して,本年度はコーシー変換とスリット領域との関係性を調査した.結果として,コーシー変換がスリット領域となるための必要十分条件を得る事ができた. 4.2010年に見出されたradialとchordalを含むような一般的なLoewner chainが擬等角拡張を持つための十分条件に関する論文をJ Anal Mathに投稿し,無事採択された. 5.予定していたレブナー理論の国際研究集会を開催した.14名(うち外国人7名)に講演を行って頂き,その中で活発な議論をすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多重スリットSLEの極限に関する研究が期待通り順調に進んでおり,おおむね順調に進展しているといえる.またその中で自由確率論とレブナー方程式との関係性の解析という新たな課題も見えてきた.擬等角拡張問題に関してもいくつかの重要な結果を得る事ができており,現在論文にまとめているところである.予定していたレブナー理論の国際研究集会は無事開催することができた.14名(うち外国人7名)に講演を行って頂き,その中で活発な議論をすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次のような研究を進めていく. 1.擬等角拡張を持つような等角写像の極値問題は21世紀にはほとんど進展はないが,現在その係数問題に対してレブナー方程式を用いる事で新たな結果を得られる見込みがたった.結局のところ実部が正であるような正則関数の係数体が満たす条件のもとでの最適化問題へと帰着するようである.この研究を進め,係数評価の新たな結果を導く. 2.多重スリットSLEの極限に関する研究の中でBurgers-Loewner方程式と呼ばれる新たな方程式系を得た.これはHerglotz関数がある微分方程式を満たすようなレブナー方程式である.これを函数論的な観点から考察し性質を解析したい. 3.自由確率論とレブナー方程式との関連性の研究を引き続き進め,どのような確率過程とレブナー方程式が関係しているのかを明らかにしていきたい.
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Causes of Carryover |
ビュルツブルク大学のSchleissinger氏を招聘および同大学へ出張予定だったが,予定が合わなかったため渡航を来年度に持ち越すこととなった.
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