2018 Fiscal Year Research-status Report
数論的力学系の視点による離散および超離散可積分系に関する研究
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17K14211
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
神吉 雅崇 関西大学, システム理工学部, 助教 (20755897)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 離散可積分系 / 可積分性判定 / 代数的エントロピー / 特異点閉じ込め / 離散力学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
離散力学系について、その一般項の因数分解を詳細に分析することで特異点構造を把握し、数値計算によって立てた予想を証明するという流れで研究を進めた。非線形の多次元力学系の発展は非常に多くの項を含むため、不定元を残しての数値計算は、数値計算の必要時間を鑑みると現実的に不可能である。 このため、一部の独立変数を適切な有理数に置き換えることで計算を早めることを試みた。そのためDiophantine integrabilityの考え方により、有理数の複雑さの指標である高さ(height)が、従来の代数的エントロピーの整数論的類似物であることを用いて、複数の離散方程式(Hietarinta-Viallet方程式の一般化・多次元化を含む)に関して、代数的エントロピーの近似値に関する数値計算を行った。このような数値実験結果を基にして、方程式の特異点の構造および互いに素条件の成立・不成立を予測することができた。 結果として、2次元離散戸田方程式の多次元格子上への拡張系に関する互いに素条件の定式化と証明についてJournal of Physics A: Mathematical and Theoreticalから論文を発表することができた。また、同じく2次元離散戸田方程式の拡張系に関して、非線形形式を定義することができ、これについても互いに素条件を証明することができた。さらに、方程式そのものが既約でない場合においても、既約性を無視して互いに素条件を適切に設定することで証明できるという結果に関してSymmetry, Integrability and Geometry: Methods and Applications誌から論文を発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディオファントス的エントロピーを様々な離散力学系において数値計算することができ、その結果として離散力学系の可積分性判定基準のひとつである互いに素条件の成立・不成立を多くの多次元方程式に関して予想できたことは計画以上の進展と考えられる。 これらの予想は実際の方程式ごとに証明を行うことができており、特に、離散戸田方程式の多次元格子への拡張に関して互いに素条件を証明した結果は専門誌Journal of Physics A: Mathematical and Theoreticalから発行された。 一方、上記結果の証明の記述に時間がかかったため、rigid幾何学との関連性の理解に若干の遅れがあり、セルオートマトン系との精密な対応の研究は十分に進展しない面もあった。 これらの結果を総合して、おおむね順調な進展であると結論づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
離散可積分系の幾何学的な側面、および超離散力学系との対応を研究する。有限体上で定義された離散力学系を、特異点でblowing-upを行うことで初期値空間の構成を試みる。 高々有限個の点同士の写像を構成すればよいので、従来の手法で初期値空間が作れなかった写像(偏差分方程式系)やblowing-upの回数が非常に多いため困難であった写像(Hietarinta-Viallet方程式の拡張や線形可能系のクラス)への応用が期待できる。 可積分系の根本的性質により、解の挙動は本質的には変化しないと予想されるが、特殊ケースが生じる場合は有限体上の可積分系特有の事情と考えられるため、特に深く調査する。 副産物として、有限体上の力学系についての理解を深め、セルオートマトン系や超離散系と呼ばれる写像の一般解についての新たな見地を得ることができる。互いに素条件を持つ写像は、対応するセルオートマトンの性質が離散系と類似していると期待され、「可積分」なセルオートマトンの分類および発見についての新たな見地を与える。
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Causes of Carryover |
参加予定であった国際研究集会が国内で開催されたため、次年度使用額が発生した。次年度使用額は数値計算用機器を研究の必要に応じて高性能化することで使用する予定である。
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