2017 Fiscal Year Research-status Report
多項式の力学系を基点とする超越整関数および多項式半群の複素力学系の研究
Project/Area Number |
17K14212
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
片方 江 一関工業高等専門学校, 未来創造工学科, 准教授 (10529598)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複素力学系 / 超越整関数 / 多項式半群 / 擬多項式写像 / ジュリア集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多項式の力学系を出発点として超越整関数および多項式半群の力学系特有の現象を明らかにすることを目標としている.平成29年度は超越整関数の反復合成による力学系の研究,特に異なる視点から複数の具体例を構成してその力学系的性質や付随する普遍集合などの性質を考察した. 主な研究実績は以下の通りである.超越整関数特有の力学系を持つ二つの具体例を構成することに成功した.一つ目は,任意に与えたn個の2次多項式の力学系を局所的に含む,すなわちn個の2次擬多項式写像を含む超越整関数で増大度が0であるものを構成した.この結果,任意に与えた有限個の2次多項式のジュリア集合のコピーを持つ超越整関数の存在を確認することができた.構成方法から,この超越整関数は遊走領域を持つことが確認できた.また,増大度が0であることから関数の具体的な形が分かった.この研究結果は2017年9月に山形大学で行われた日本数学会2017年秋季総合分科会,2018年2月に岩手大学で行われた日本数学会東北支部会で報告した.さらに,2017年5月に専門誌(Nonlinearity)に掲載となった. 二つ目は,任意に与えた加算無限個の2次多項式を局所的に含む,すなわち加算無限個の2次擬多項式写像を含む超越整関数で増大度が0であるものを構成した.この結果,任意に与えた加算無限個の2次多項式のジュリア集合のコピーを持つ超越整関数の存在を確認することができた.構成方法から,この超越整関数は遊走領域を持つことが確認できた.また,増大度が0であることから関数の具体的な形が分かった.この研究結果は2017年11月に行われた等角写像論・値分布論研究集会で報告した.さらに,この結果をまとめた論文を専門誌に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
擬多項式写像をキーワードとして,与えられた有限個または加算無限個の2次多項式の力学系を局所的に含む超越整関数の例を構成することができた.この結果,与えられた有限個または加算無限個の2次多項式のジュリア集合のコピーを持つ超越整関数の存在を確認することができた.当初は構成した超越整関数の増大度の計算は行っていなかったが,2017年9月に行われた日本数学会,2017年11月に行われた等角写像論・値分布論研究集会に出席したことでヒントが得られ,増大度の計算をうまく行うことができた.増大度が0であったことは多少意外ではあったが,このことにより構成した超越整関数の形が具体的が分かり非常に良かった.有限個ヴァージョンをまとめた論文は専門誌(Nonlinearity)に掲載することができた.加算無限個ヴァージョンをまとめた論文は現在専門誌に投稿中である.多項式を基点として超越整関数特有の現象を確認できたことは,研究計画に示した狙い通りの結果であり満足できるものであった.一方で,もう一つも研究対象である多項式半群の力学系については十分な考察を行うことができなかった.これは超越整関数の具体例の構成し,力学系的性質を考察することに時間がかかったためである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得た具体例の構成方法を応用して,引き続き具体例の構成を行う.例えば,与えられた加算無限個の2次多項式のジュリア集合のコピーを持つ超越整関数で増大度が0でないもの,与えられた加算無限個の高次多項式のジュリア集合のコピーを持つ超越整関数など,本質的に異なる具体例を構成する.得られた具体例の力学系的性質やファトウ集合・ジュリア集合の位相的性質を明らかにするために,急速発散点集合・蜘蛛の巣・髪の毛などの超越整関数の力学系特有の集合を解析する.適宜コンピュータプログラムを利用する.十分な具体例を構成し力学系的性質を十分に解析することができたら,それを基に一般論の構築を行う.研究の技術的側面はこれまでの研究手法を応用するが,一般論の構築はより困難を伴うため外部研究者とディスカッション・情報交換を行いながら研究を円滑に進める.また,多項式半群の力学系の研究については上述の一般論構築に対して一定の成果が表れてから取り組むこととし,平成30年度は超越整関数の力学系の研究に集中することとする.
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Causes of Carryover |
校務により学会出張日数が一日減となったため. 翌年度分として請求した助成金と合わせて出張旅費に充てる.
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