2018 Fiscal Year Research-status Report
新しいカーボンナノチューブのバンドスペクトル構造の研究とその周辺
Project/Area Number |
17K14221
|
Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
新國 裕昭 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (90609562)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 関数解析学 / 微分方程式 / シュレディンガー方程式 / 量子グラフ / カーボンナノチューブ / バンド構造 / 埋蔵固有値 / 不純物 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,前年度に続いてカーボンナノチューブに関連する量子グラフ上のシュレディンガー作用素のスペクトルについての研究を進めた。まず,前年度に掲載が受理された「スーパーカーボンナノチューブのスペクトル」に関する論文は,5月に Communications in Computational Physics に掲載された。また,2017年度末頃に結果の得られた「不純物を含有する場合のカーボンナノチューブのスペクトル」に関する結果を本年度の早い段階で論文として取りまとめをし,いくつかの研究集会での意見交換を経てから12月ごろに投稿を行った。本研究では,不純物をデルタ型頂点条件によって表現し,有限個の,そして2種類の対称性を持つ不純物の配置をカーボンナノチューブ内に行った際に生じるスペクトルバンド内の固有値の存在とその個数の下からの評価について論じている。結果として,不純物の影響による電子の存在が確かめられ,解析に用いたSch'nol型定理は,今後の研究の1つの方向性を定めることとなった。論文は,2018年度末の段階で査読中の状態である。本研究成果は,科学研究費を利用してカナダ・モントリオールで開催された国際研究集会 ICMP の young reseachers symposium や国内の研究集会における口頭発表の形で情報発信している。また,北海道大学における大学院生向けの集中講義「物質科学におけるスペクトル理論入門」や,筑波大学付属駒場中高等学校における数学特別講座においても当該研究周辺の知識を取りまとめて紹介する機会が得られる年であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までは,周期構造を持つカーボンナノチューブのみを扱っていたが,本年度より不均一な状況下でのカーボンナノチューブ内の電子に対応するシュレディンガー作用素のスペクトルが扱えたことが挙げられる。前年度末に予定していた通り,不純物を含有するカーボンナノチューブに関して論文に取りまとめ投稿することができているのでおおむね順調に進展していると判断する。 また,現在はカーボンナノチューブ内の水分子が作る特殊な分子構造(アイスナノチューブ)に着目している。アイスナノチューブに関する量子グラフのモデルを解析し,原子間の距離に関する定量的な観点から,バンドギャップの存在・非存在についての結果が概ねまとまっており,計算のチェックなどを残してはいるが次の研究に関する方向性が定められていることも挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記で述べた「不純物を含有するカーボンナノチューブのスペクトル」に関する論文は投稿中であるため,審査の結果を待つとともに,次年度に予定されている QMath14, Equadiff 2019などの国際研究集会を通して口頭発表を通じて更なる研究の方向性を探る。また,当該研究を通して Sch'nol 型定理による解析の手法を実践することができたため,トポロジカル絶縁体的性質との関連性を探る方向性に研究が進められるか検証を行いたい。また,均一な周期的モデルにおいてもアイスナノチューブが注目されるため,その量子グラフに関する論文の執筆を進めていく。
|
Causes of Carryover |
学内業務や研究の取りまとめ作業を中心に行っていたため,当初予定していたいくつかの研究集会への参加を断念したため,次年度使用額が生じた。次年度は,QMath14, Equadiff2019など複数の国際研究集会が控えているため,情報収集と研究発表を兼ねて参加するである。そのための経費として使用する予定である。
|