2019 Fiscal Year Research-status Report
新しいカーボンナノチューブのバンドスペクトル構造の研究とその周辺
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17K14221
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
新國 裕昭 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (90609562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シュレディンガー作用素 / スペクトル / 埋蔵固有値 / カーボンナノチューブ / グラフェン / 量子グラフ / バルクハミルトニアン / エッジハミルトニアン |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,前年度に続き,カーボンナノチューブに関連する量子グラフ上のシュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究を行った。はじめに,不純物を含有するカーボンナノチューブ上のシュレディンガー作用素のスペクトル理論について投稿していた論文が,Letters in Mathematical Physics から出版された。本論文の結果は,本年度科学研究費の支援を受けて,3カ国での国際研究集会「Equadiff2019」(オランダ),「Iwota2019」(ポルトガル),「Qmath14」(デンマーク)の他,大阪大学が主催する研究集会「The 17th Linear and Nonlinear Waves」やRIMS共同研究「幾何構造がもたらすスペクトル解析における新展開」で口頭発表による周知を行った。 また,2019年度中に2編の論文投稿を行い,2019年度末現在,査読中となっている。そのうちの1つは,カーボンナノチューブ内の水分子が持つ特殊な分子構造(アイスナノチューブ)に付随するシュレディンガー作用素のスペクトルについての論文である。また,2つ目は,量子グラフの観点からグラフェンにおけるバルクハミルトニアンとエッジハミルトニアンのスペクトルの比較をしたものとなっている。両者を量子グラフで定式化し,シュノールの定理を軸としてスペクトルの比較をすることで,エッジを持つグラフェンの場合には,バルク状態にはない埋蔵固有値が現れることを証明した。論文投稿は行ったが,口頭発表は行っていないため次年度に向けて周知の準備を試みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カーボンナノチューブに関連するシュレディンガー作用素のスペクトル理論の研究において,不純物による不均一性を有する場合の考察や,近年トポロジカル絶縁体の分野で注目されるバルクハミルトニアンとエッジハミルトニアンのスペクトルの比較が量子グラフの観点から進められたため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の影響で,多くの研究集会の中止に加え,遠隔授業などの特殊な対応が大学に求められるなど,次年度中は不測の事態となることが想定される。その時々で適切な対応をした上で,研究体制の確保に努めたい。口頭発表の機会が少なくなることや文献の入手が困難となることが予想されるため,研究室内での計算の時間を多く確保しながら研究を進める。 前年度は,グラフェンに対してバルクハミルトニアン(全空間の場合)とエッジハミルトニアン(境界を持つ場合)を比較し,量子グラフの観点からバルクの場合に存在しない埋蔵固有値の発見に寄与することができた。また,不純物を含むカーボンナノチューブのスペクトル理論の論文を出版することができた。両者において,バンドスペクトルの構成にはシュノールの定理を用い,固有値の存在・非存在には移動行列の手法を用いている。この手法の組み合わせにより,不均一性の高い炭素分子材料に対応するシュレディンガー作用素のスペクトルの計算を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
日本数学会2020年度年会への日帰りでの参加を予定していたが,新型コロナウィルス感染症の影響で学会が中止となり,次年度使用額とすることとなった。次年度の研究の進捗状況に合わせて必要となる文献(数学所)の購入のために使用することを計画している。
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