2020 Fiscal Year Research-status Report
新しいカーボンナノチューブのバンドスペクトル構造の研究とその周辺
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17K14221
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
新國 裕昭 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (90609562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子グラフ / グラフェン / スペクトル / 分散関係 / エッジ状態 / Floquet-Bloch理論 / 移動行列 / Shnol 型定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
物性物理学の対象である「トポロジカル絶縁体」は、「内部(バルク)は絶縁体だが表面(エッジ)は伝導体」となる現代的な物質である。近年は,2013年のGraf-Porta の解釈に基づき, トポロジカル絶縁体的な性質を探る手法を確立するためバルク・エッジハミルトニアンのスペクトルを比較する手法を検討している。本年度は,その最初の論文として「Edge states of Schroedinger equation on graphene with zigzag boundaries」の掲載が数学誌「Results in Mathematics」に受理された。本論文の内容は,量子グラフ的に定義されるグラフェンに対して,あるエネルギー準位がバルクハミルトニアンの固有値ではないがエッジハミルトニアンの固有値となる,という内容である。本論文の内容は,ZOOM開催された研究集会「偏微分方程式姫路研究集会」において発表を行い,研究内容の周知を行った。本研究においてバルクハミルトニアンの役割を果たす量子グラフのスペクトルは,2007年のKuchment-Postの研究においてほぼ十分に研究がなされており,バンド構造をなす絶対連続スペクトルに加え,多重度無限大の固有値から構成されることが知られている。そのため,本研究論文の主要な考察対象は,ジグザグ型の境界を有するグラフェンに対応する量子グラフ(エッジハミルトニアン)のスペクトルである。本研究で扱うエッジハミルトニアンは,境界を推移する方向の周期性を有するため,direct integral decomposition の手法で基本領域上の問題に帰結する。また,境界から離れる方向については周期性を持たないが,移動行列の固有値・固有ベクトルの問題として解析することでバルクハミルトニアンの分散関係には表れない固有値曲線が存在することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、論文「Edge states of Schroedinger equations on graphene with zigzag boundaries」が数学誌「Results in Mathematics」に掲載された。4月当初、この成果をイギリスで開催予定であった国際研究集会や国内の研究集会において口頭発表することを計画していたが、新型コロナウィルス感染症の影響で研究集会が軒並み開催が見送られることとなり、旅費として計上していた予算の執行が滞り、結果として「やや遅れている」形となってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、論文「Edge states of Schroedinger equations on graphene with zigzag boundaries」の研究成果の周知と進展させることを計画している。新型コロナウィルス感染症の影響で中止となっていた研究集会は、令和2年度後期からオンラインによる開催が行われ始めた。そのため、令和2年度に旅費分として計上していた予算はオンラインでの研究発表に必要な発表機材の充実化に使用し、令和2年度に行えなかった口頭での研究成果発表の場を増やしていきたいと考えている。 また、研究面では、上記の論文で培った計算方法を活用し、より複雑な境界を持つグラフェン常に定義されるシュレディンガー作用素のスペクトル解析を進めることを計画している。先行論文より複雑な解析が必要になるため、新たな解析方法の確立の必要性が生じた場合などには当該研究の周辺の論文からの情報収集を行いながら解析を進める。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、令和元年度末に数学誌に投稿した論文「Edge states of Schroedinger equations on graphene with zigzag boundaries」の成果を国際研究集会 IWOTA 2020 (イギリス)、神楽坂解析セミナー(東京理科大学)などにおいて口頭発表することを計画していたが、新型コロナウィルス感染症の影響で研究集会が中止となり、旅費として計上していた予算の執行が滞る形となった。そのため、次年度使用額が生じることとなった。 新型コロナウィルス感染症の影響で中止となっていた研究集会は、令和2年度後期からオンラインによる開催が徐々に再会し始めた。そのため、次年度使用額分は、オンラインでの研究発表に必要な発表機材の充実化に使用し、令和2年度に行えなかった口頭での研究成果発表の場を増やしていきたいと考えている。また、2021年3月に掲載された論文で培った計算方法を活用し、より複雑な境界を持つグラフェン常に定義されるシュレディンガー作用素のスペクトル解析を進めることを計画している。先行論文より複雑な解析が必要になるため、当該研究の周辺の論文からの情報収集を行いながら解析を進める。そのための書籍の購入にも次年度使用額分を使用し研究を継続する。
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