Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に以下の3つの研究を行った. 1.赤堀公史氏(静岡大), Slim Ibrahim氏(ビクトリア大), 名和範人(明治大)との共同研究の下, 二重冪を伴う非線形シュレディンガー方程式の基底状態の存在・非存在を調べた. 空間4次元以上では, すべての振動数に対して基底状態が存在することが知られているが, 空間3次元においては, ある状況の下では, 振動数が大きいと基底状態が存在しないことが分かった. さらには, ある閾値が存在して, 振動数がその閾値以下であると, 基底状態が存在して, その閾値より大きいと, 基底状態が存在しないことが分かった. また, 基底状態の非退化性についても調べた. 2.Slim Ibrahim氏(ビクトリア大), 中西賢次氏(京都大), Juncheng Wei氏(ブリティッシュ・コロンビア大)との共同研究により, 空間2次元非線形熱方程式における初期値問題の解の非一意性を示した. 空間3次元以上のある臨界ケースにおいては, 解の非一意性は知られていたが, 2次元の臨界ケースのときは非線形項は指数増大をもつことになり, 対応する結果は知られていなかった. ここでは, 指数増大を持つある非線形項に対して, 特異定常解を構成し, さらにその定常解を初期値とする正則な解を構成することで, 非一意性を示した. 3.Slim Ibrahim氏(ビクトリア大), Yakine Bahri (ビクトリア大)との共同研究の下, Halfwave-Schrodinger方程式の定在波の安定性を調べた. 空間領域が全空間においては, 定在波は, 質量劣臨界と優臨海においてはそれぞれ安定および不安定であることを示した. また, 空間領域が直線とトーラスの積である空間においても, 線ソリトンの安定性や基底状態の特徴づけについても調べた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二重冪を伴う非線形シュレディンガー方程式の基底状態については, 概ね期待した結果は得られている. この問題に関しては, 残りは空間4次元の基底状態の一意性と非退化性のみが未解決である. この場合も, これまでの手法を用いて解析できるのではないかと考えている. また, これまで得られた基底状態の性質を用いることにより, 非線形シュレディンガー方程式の解の大域挙動, 特に基底状態のまわりの解の挙動についても解析できると期待している. それから, 空間3次元における定常問題の解の分岐構造を解析する研究については, 基底状態の存在の有無を定める閾値が存在することが分かった. 今後はこの閾値において, 基底状態はどのようなものかを解析することで分岐構造が解明できるのではないかと期待している. Halfwave-Schrodinger 方程式の定在波の安定性や基底状態の特徴づけについては当初より期待していた結果は得られそうである。直線とトーラスの積である空間領域においては、残りは定常問題の解の正則性や指数減衰性を示すなど技術的だと思われることを示せばよく, これは既存の結果を応用することで証明できるものと考えている. 指数型非線形項の空間2次元楕円型方程式の解の構造を解析する研究についてはやや遅れている。これを示すには原点で発散するような特異解が重要な役割を果たす。これまではこの特異解が存在するのは分かっているが、当初の目標を達成するには、この特異解の一意性を調べることが必要である。これまでの研究により、この解の一意性について調べるには、全ての解の増大度が分かればよいことが分かった。この増大度は、空間3次元以上では求めることが出来るが、2次元には技術的な問題により、まだ期待する評価は得られておらず、今後は力学系の理論を用いるなどして解析したい.
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Strategy for Future Research Activity |
二重冪を伴う非線形シュレディンガー方程式については, 以下のことを取り組みたい. 1. 定常問題については, 空間4次元の基底状態の一意性や非退化性を調べたいと考えている. このことはこれまでの手法を用いることで解析可能ではないかと考えている. 2-1. 時間発展の問題については, Nakanishi-Schlag(2012)のように基底状態よりも高いエネルギーを持つ解の大域挙動を調べたい. 既に低周波の基底状態については解析しているので, そこで用いた手法を高周波の基底状態に対しても適用したい. また, これまでは非線形項には, ある技術的な条件が必要であったが, その条件を取り除くことにも取り組みたい. 2-2. 3次元のときは, ある場合においては, 基底状態が存在しないことが分かっている. この場合, ある変分値よりも小さいエネルギーを持つ解は散乱するか, 爆発するかのいづれかであることが期待できる. しかし, その変分値よりも大きいエネルギーを持つ場合は, 解はどのような振る舞いをするかということは自明ではないと思われる. この場合においては, 解の分類をすることは難しいかもしれないが, Talenti 関数と呼ばれる明示的に書ける関数をリスケーリングしたものに収束する解があることは示せるのではないかと思われ, この問題について取り組みたい. 非線形熱方程式の解の非一意性については, これまで得た空間2次元の結果を一般的に出来ないかどうかを取り組みたい. また, 空間3次元以上においても非一意性が成立するかどうかということも考えたい. HalfWave-Schrodinger方程式に対しては, 定常問題の解の正則性などの技術的と思われることが分かれば、安定性が得られるので, それらを調べたい. また, 漸近安定性や爆発解などについても取り組んでいきたい.
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