2017 Fiscal Year Research-status Report
血流の解析を目標とした圧縮性粘性流体方程式の適切性
Project/Area Number |
17K14225
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
村田 美帆 神奈川大学, 工学部, 助教 (90754888)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 流体数学 / 流体と剛体の連成問題 / 時間大域解 / 時間局所解 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化や動脈瘤のような動脈の病気の解明や血管の手術には血液の流れを考察する必要があるが, 生体現象であるため直接的な実験や観測が困難である. そのため理論的な解析が必要であるが, 数学的な研究成果は少ない. 本研究の目的は, 血液の流れを数学的に考察することである. 特に, 大動脈瘤のように血管壁に大きな圧力がかかる場合の血流について扱うために, 血液を圧縮性流体として解析を行った. また, 血液の主な構成要素は赤血球であるため, 血流を解析するために赤血球の運動を考察することは重要であるとされている. 本来は赤血球の変形を考慮すべきであるが, 解析の第一歩として赤血球を剛体とし流体との相互作用を考察した. 数学的に定式化すれば, 流体の占める領域は時間によって変化する外部領域, 境界条件は非斉次境界条件となる. この問題を流体と剛体の連成問題と呼び, 時間大域的適切性を得ることを目標に考察を行った. 今年度はMatthias Hieber教授(ダルムシュタット工科大学)との共同研究で得られた時間局所的適切性に関する結果の改良を行った. 以前の手法では, 線形化した流体方程式に対する既存の結果を用いるために流体方程式と剛体の運動を表す方程式の2つ分け, 線形化問題の解析を行った. 次に非線形項を含む方程式の右辺を評価し縮小写像の原理により時間局所的適切性を得た. しかしこの評価は時間の幅に依存しているため時間大域解への延長は期待できない. そこで問題のある項を含めた線形化問題を解析することによって時間の幅に依存しない評価を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
時間大域的適切性を目標としていたが, 時間局所的適切性の証明について問題点があったため改良する必要があった. また, 時間大域的適切性についてはまずは空間2次元において, 簡単のため剛体を円盤とし考察を行った. 研究計画に沿って非圧縮性流体の場合に任意の初期値に対する時間大域的適切性を示した, T.Takahashi-M.Tucsnak(2004)を参考に任意の初期値に対し考察を行った結果, 流速を未知関数とした運動量保存の方程式と剛体の運動を表す方程式の連立方程式については, 半群理論により解を構成することできた. しかし, 密度を未知関数とした輸送方程式を解く際, 正則性の損失が生じ, アプリオリ評価で解を構成するのは困難であると分かった.そのため研究計画を見直す必要があった.
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Strategy for Future Research Activity |
非圧縮性流体の場合に任意の初期値に対する時間大域的適切性を示した, T.Takahashi-M.Tucsnak(2004)の手法では, 流速を未知関数とした運動量保存の方程式と剛体の運動を表す方程式の連立方程式については, 半群理論により解を構成することできるが, 密度を未知関数とした輸送方程式を解く際, 正則性の損失が生じ, アプリオリ評価で解を構成するのは困難であると分かった. そこで境界条件を拡張することで連成問題を2次元全空間上の問題として捉え, 圧縮性Navier-Stokes方程式に対し2次元全空間上で時間大域的適切性の結果を得たZhen Luo(2013)の手法を参考に研究を進める. 本研究については, 昨年度議論を行ったGiovanni P.Galdi教授(ピッツバーグ大学)と引き続き議論をし研究を遂行する.
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