2017 Fiscal Year Research-status Report
Construction of stability theory of ordinary differential systems by fractal analysis
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17K14226
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
鬼塚 政一 岡山理科大学, 理学部, 講師 (20548367)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハイヤーズ-ウラム安定性(HUS) / HUS定数 / 線形差分方程式 / 刻み幅 / ボックス次元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2次元常微分方程式系の解の螺線軌道の長さとフラクタル次元を測り、漸近安定性の度合いを数値化した指標を手がかりに、フラクタル解析による安定性理論を構築することである。 現在までの進捗状況に示す通り、当該年度を開始する以前に一定の成果が得られていたため、本年度は特に安定性を中心に研究を推進した。当該年度で主として考察したのは、ハイヤーズ-ウラム安定性(HUS)である。この安定性は、関数方程式の近似解と厳密解の近さ(精度)を保証する性質であり、コンピュータサイエンスにおける有用性が知られている。具体的には、近似解のε近傍を考察し、そのε近傍内に厳密解が常に存在する場合をHUSと言う。フラクタル解析を行う上で重要となるボックス次元の定義においても解のε近傍を考察し、その内部の面積を解析することでボックス次元を導出するため、HUSとの関連が深いことが予想された。当該年度では、ボックス次元との関わりまでは明らかにされなかったが、定数刻み幅を持つ1階線形差分方程式、2階線形差分方程式に関する成果を得た。特に、HUSを考察するうえで最も重要なのが、近似解と厳密解の近さ(精度)を数値として表すHUS定数である。何かしらのHUS定数が存在すれば、ハイヤーズ-ウラム安定性をもつことになるが、HUSに関連するこれまでの多くの研究では、そのHUS定数が最小であるか否かについては議論されていなかった。しかしながら、本研究では、上記3つの方程式において、最良のHUS定数を導出することに成功し、近似解に付随する厳密解までも具体的に記述することを可能とする定理を得た。さらに、その定理を応用し、ある線形微分方程式に対する摂動方程式のすべての解の終局有界性を保証する定理を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度が開始する以前から、Ⅰ)線形系に対するテーマ: A) 解軌道の無限回転・有限回転の判定法の確立 B) 螺線軌道の無限長・有限長の判定法の確立 C) フラクタル次元の解析 に対して、研究が順調に進展しており、研究開始以前に同大学の田中敏氏との共著論文を投稿し受理されている。そのため、当該年度では、ボックス次元との関連が予想されるハイヤーズ-ウラム安定性(HUS)を中心に追加の研究を行った。このHUSに関する研究においても予想以上の成果が得られ、1階線形差分方程式、2階線形差分方程式、1階線形Dynamic Equationsそれぞれに対する最良のHUS定数を導出することに成功し、3編の論文として執筆が完了している。その内、既に1編は受理・オンライン上で掲載済みである。また、これら以外にも1階線形微分方程式に対するHUSの研究成果が得られ、現在1編を執筆中である。当該年度は予想以上の成果が得られ、研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該研究の主軸であるⅡ)準線形系の一種である半分線形系やスチュアート・ランダウ方程式系を中心に、テーマA) 解軌道の無限回転・有限回転の判定法の確立、B) 螺線軌道の無限長・有限長の判定法の確立に着手する。また、ロトカ・ヴォルテラ系をはじめⅢ)捕食者-被食者系の数理生物学に関する情報収集を行いたい。加えて、H29年度において、ハイヤーズ-ウラム安定性(HUS)においても更なる発展が期待できることが判明しているため、今後も継続してHUS及びHUS定数に関係する研究を推進し、ボックス次元との関連性を見出したい。
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Causes of Carryover |
当該年度が開始する以前から、研究が順調に進展しており、当該年度では、ボックス次元との関連が予想されるハイヤーズ-ウラム安定性(HUS)を中心に研究を行ったため、当初予定していた計算機やソフトの購入を次年度に延期した。加えて、現在、投稿中の論文2編がアクセプトされた際、即座にオープンアクセス料の支払いができるよう当該年度での使用を控えた。翌年度分として請求した助成金は当初の計画通りに使用し、今回、次年度使用額(B-A)として生じた分は、計算機やソフトの購入及びオープンアクセス料の支払いに充てたい。
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Research Products
(14 results)