2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K14227
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
甲斐 伊都子 (橋本伊都子) 関西大学, システム理工学部, 特別任用准教授 (70584639)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 単独粘性保存則 / バーガーズ方程式 / 球対称問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘性保存則の一次元での結果を空間多次元へ拡張し,これまでほとんど研究されてこなかった球対称問題について研究を行っている. この方向での研究のケーススタディとして, 多次元空間上のバーガーズ方程式に対し, 外部領域における球対称解の漸近挙動について考察している. これまで, バーガーズ方程式や粘性保存則の多次元空間上での考察は, planar wave の解析が殆どであり,球対称解についての考察はなされてこなかった. 昨年度までの研究において,対応するリーマン問題が希薄波を持つ場合に対し境界条件の状態に応じて解の漸近形は「定常波」, 「希薄波」,「定常波と希薄波の重ね合わせ」の3 つの場合に分類されることを証明した. この結果は,半空間上における単独粘性保存則の初期値境界値問題の漸近形と同じものであることが確かめられた.さらに解の各漸近形への漸近評価についても「時間に関する重み付きエネルギー法」を用いることにより導出した. 今年度はバーガーズ方程式の外部問題において,単独1次元粘性保存則では存在しなかった漸近形について,単独粘性保存則では漸近形が衝撃波となる境界条件に対して,バーガーズ方程式の球対称解では「単調減少な定常波」となることを明らかにし論文を投稿,受理された.ここで単独粘性保存則の定常波は常に「単調増大」なものに限られるが,球対称バーガーズ方程式が「単調減少な定常波」を持つこと自体も大きな発見である. さらに同投稿論文において,球対称バーガーズ方程式が,単調増大でも単調減少でもない「非単調な定常波」を持つことを発見し,この定常波に対する漸近安定性の証明も行った. また空間3次元に関しては,漸近形を完全に分類することに成功し,特に衝撃波に関しては漸近形が,「1次元バーガーズ方程式の衝撃波と単調減少な定常波の重ね合わせ」となることも記載した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り順調に研究が進展している.具体的に、昨年度は日本数学会年度会での講演や、金沢大学解析セミナーでの講演、また中国北京の中国科学院での講演を行なった。そこでは現在行っている球対称バーガーズ方程式の最近の結果を講演し、国内外の研究者と情報交換を行った。また国際雑誌であるjournal of differential equationに論文を投稿し掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
高次元空間上のバーガーズ方程式の球対称問題の解の漸近解析において,対象となる主流の定常解は球対称であり,その摂動としての非定常流も球対称という制限を課してきた.即ち,初期擾乱が球対称の流れであれば,定常解及び摂動解の和として全体の流れの場も球対称という強い仮定の下で,解の時間無限大における漸近解析を考察した. しかし実在する気体の爆発現象においては,たとえ小さな球対称の初期擾乱であっても,流れの場は瞬時に非対称となり,それ故,摂動解は一般的な3次元の流れとして取り扱うことが自然である. 高次元バーガーズ方程式において,主流の球対称定常解に非対称の初期擾乱を与えた場合について数学的理論を構築する.この方面の研究については,早稲田大学の小薗教授等により開発されたNavier-Stokes方程式に対する半群の摂動理論の方法や,圧縮性粘性流体のグループにより発展した高次元空間上の粘性保存則の平面波に対するエネルギー法等を駆使し,これらの解の性質と差異を明らかにしつつ,高次元バーガーズ方程式固有の漸近解析を確立する.
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Causes of Carryover |
現在育児中であり、出張もほんの限られた研究会しか出席することが出来ず、出張旅費も思うように使用出来ない状態である。 今年度は短期の海外出張を数回計画しており、渡航費と滞在費を通して研究費を有効に使用する予定である。 また流体関係の書籍を10冊程度購入し、使用困難となったプリンターや実験用にノートパソコンを新規に購入するなどして研究費を有効に使用していく。
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