2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K14230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柏原 崇人 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任助教 (80771477)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有限要素法 / 誤差評価 / プリミティブ方程式 / 時間大域解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の目的に掲げた4つのテーマのうち、(A)領域近似を伴う有限要素法の解析と、(B)大気海洋の分野に現れるプリミティブ方程式の解析について研究を進めた。 テーマ(A)では、滑らかな領域(曲がった境界を持つ領域)上の偏微分方程式に対する有限要素近似として最も基本的な方法、つまり元の滑らかな領域を多角形や多面体で近似した後に通常の有限要素法を適用する方法を考察した。より具体的には、時間非定常Stokes方程式の滑り境界条件問題に対する誤差評価、同定常問題にCrouzeix-Raviart近似を適用した場合の誤差評価、そしてPoisson方程式のNeumann境界条件問題に対する最大値ノルムによる誤差評価という3つの課題を考察した。その結果、いずれの課題でも、一定の状況下において、近似解が最良オーダー収束することを示すことができた。 テーマ(B)では、大規模なスケールにおける大気・海洋の運動を記述するプリミティブ方程式に対するを研究を行った。これは、空間3次元のNavier-Stokes方程式において、鉛直方向に静水圧近似を適用して得られる偏微分方程式である。以前の研究で、我々はこの方程式系に対するLp理論を構築し、初期値が(ある意味での)2/p階微分を持っていれば、時間大域的な強解がただ1つ存在することを示していた。今回の研究では、この解が初期時刻後は平滑化効果によって直ちに古典解になることを示した。また、初期値問題に対する時間大域解の理論を応用して、任意の外力と周期が与えられたときに時間周期解が少なくとも1つ存在することを示した。さらに,pが無限大に相当する場合、すなわち初期値に微分可能性を仮定しない場合にも、時間大域的な解の一意存在定理を拡張することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的に掲げた4つのテーマは、(1) 非圧縮Euler方程式に対する"potentially singular solution"の解析、(2) 流入出を許容する境界条件の解析、(3) 領域近似を伴う有限要素法の解析、(4) 大気海洋の分野に現れるプリミティブ方程式の解析である。 このうち、研究実績の概要で述べたように、(3)と(4)については大きな進展があった。実際、(3)においては、まず定常問題の結果を時間非定常問題の場合に拡張することに成功し、さらに適合P1有限要素による近似をあえて非適合なもの(Crouzeix-Raviart近似)におきかえることにより、以前得られていた誤差評価を改善することができた。そして(4)においては、以前得られていたLp理論の結果をいろいろな形に拡張することができ、プリミティブ方程式の解の振る舞いを明らかにすることに貢献できた。 一方で、テーマ(1)(2)については、問題の難しさから当初の計画通り研究を進めることができておらず、来年度以降の研究計画を修正する必要性を感じている。実際には、(1)(2)とも、近似解を計算するための数値計算スキームの構築と実装は完了しているので、その点で進捗はゼロというわけでない。しかしながら、数値計算結果と整合的な数学理論の定式化と証明に難しさがあり、この点の解決が研究上の障壁となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究テーマ(3)(4)は、本年度の進捗をもとにさらなる研究の進展が見込まれる。実際、(3)については、Stokes方程式の滑り境界条件問題の研究で得られた知見をStokes-Darcy問題の境界面(interface)問題に拡張するという新たな課題を見出している。さらに、最大値ノルム誤差解析の時間発展問題(放物型方程式)、非線形方程式、一般のアイソパラメトリック有限要素法に拡張することも、新たな研究の展望として視野に入れている。(4)については、Navier-Stokes方程式においてある意味での極限を取ることによりプリミティブ方程式が得られることの証明を目標としている。 研究テーマ(1)(2)については、現状では特に理論面で難しさに直面しているので、パラメータ等を変更しながら数値計算を何度も実行し、数学的に定式化および証明可能な問題設定を発見することに注力したいと考えている。具体的には、(1)では、軸対称Euler流の爆発に関する新たな論文が発表されているので、それを数値シミュレーションで再現できないか検討する。(2)では、境界上での流入が原因となり有限時間で解が発散(爆発)してしまう数値例を詳しく考察し、流入と発散を結びつけるファクターを突き止めることを目標とする。
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Research Products
(8 results)