2017 Fiscal Year Research-status Report
非正則な統計モデルに対する客観ベイズ法に関する研究
Project/Area Number |
17K14233
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
橋本 真太郎 広島大学, 理学研究科, 助教 (60772796)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ベイズ統計学 / 非正則モデル / 統計数学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に非正則な確率分布に対するベイズ推測について,事前分布の観点から研究を進めた. モデルが複雑である場合や分析開始時などの事前情報が少ない場合には,事前情報をあまり多く含まない客観事前分布を用いてベイズ分析を行うことがある.客観事前分布に基づいたベイズ推測は客観ベイズ法とも呼ばれ,現在のベイズ統計学の主流になりつつある.客観事前分布の代表的な選択方法として,信用区間や推定量が頻度主義における妥当性を持つように事前分布を構成する probability matching や moment matching と呼ばれる方法がある.今年度は密度関数の台が未知母数に依存するような非正則な確率分布に対して,二乗損失関数のもとでのベイズ推定量と(バイアス補正した)最尤推定量が2次のオーダーで漸近的に一致するような事前分布を導出し,その性質を検証し具体例を与えた.また,局外母数を持つような多母数の場合に関してもある種の偏微分方程式の解として客観事前分布を得ることができることがわかった.これらの結果は切断指数型分布族などのベイズ推測に対して,事前分布の選択に関する一つの指針を与えるものになり得ると期待される.以上の結果は論文としてまとめ,現在投稿中である.しかしながら,moment matching による事前分布は正則・非正則な場合共にパラメータの一対一変換に関する不変性を持たないため,その問題をどのように捉えるかということと,事前分布が improper になる場合に事後分布が proper になるか否かという問題は次年度以降の課題としたい.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は,多母数の非正則モデルに対して事前分布と事後分布の間の情報量損失の観点から客観事前分布を導くことを考えていたが,一部困難が生じたため保留状態にある.しかしながら,別の観点からの客観事前分布に関しては結果を得ることができ,今後の進展も見込まれるため,その意味では研究に進展はあったといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後に関しては,上記で挙げた課題に加え次の二つの問題を考える. 一つ目は,非正則なモデルに対してより高次のオーダーでの probability matching や moment matching による客観事前分布の導出を行う.正則な場合には理論は概ね完成されているが,非正則な場合にどのような結果になるのかは興味深い. 二つ目は,極値理論において現れる一般極値分布や一般パレート分布はある状況下では非正則モデルになり,最尤法などの手法がうまく機能しないことがあるため,ベイズ的なアプローチでの研究が発展してきている.そのようなモデルに対する事後分布や事後予測分布の漸近的性質や客観事前分布の導出について取り組むことは重要な問題である.
|
Causes of Carryover |
参加予定であった国際研究集会を諸事情によりキャンセルしたことにより次年度使用額が生じた.2018年度に海外出張を予定しているため出張旅費として使用する.
|
Research Products
(8 results)