2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of rigorous computation methods for singular trajectories in dynamical systems
Project/Area Number |
17K14235
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松江 要 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (70610046)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 精度保証付き数値計算 / 爆発解 / 絶滅進行波 / コンパクトン進行波 / 力学系 / 漸近挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は有限時間特異性の精度保証付き数値計算法の構築、および付随する数学理論の確立を主に行った。 まず、漸近的に擬斉次なベクトル場で生成される力学系の爆発解の精度保証付き数値計算法を筑波大学の高安亮紀氏と構築した。これにより、先行研究である「爆発解の精度保証付き数値計算法」の適用範囲が大幅に広がった。 次に、絶滅・コンパクトン進行波解の精度保証付き数値計算法を構築した。これは発散しないこと以外の計算メカニズムが爆発解と共通しているため、拡張の可能性を期待するのは自然である。爆発解の研究で意識しなかった問題「不安定な軌道における漸近挙動の定量的評価」生じていたが、これも従来の研究結果の応用と力学系的考察によりクリアした。特に、退化した放物型偏微分方程式の有限進行波解に適用でき、1個のコンパクトン進行波解から可算無限個の解の存在を証明し、その具体形を計算できるようになったのは数学・数値的に大きな成果であると考える。 最後に、上記の精度保証計算法が適用できない場合:時間大域解の漸近先が非双曲型不変集合だった場合の漸近挙動を評価した。標準的な中心多様体上の力学系の解析に帰着させることで、爆発解の爆発レート、絶滅進行波の絶滅レート、コンパクトン進行波解の0値近傍での挙動の標準的な導出方法を構築できた。これにより、有限時間特異性を全て不変集合の安定・不安定・中心多様体上の振る舞いの考察に帰着させることに成功した。力学系的アプローチは精度保証付き数値計算法と非常に相性が良く多くの先行研究があるため、今後の計算法統合に向けて大きく前進したと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたfast-slow系の精度保証付き数値計算法の構築は、数学的に正当化すべき箇所が予想以上に出現し、その解決及び実際の計算コードのデバッグに時間を大幅に割かれた(現在は概ね完了)。またエフォート外の業務が多数入り、そちらの対応にも追われた現状がある。 他方で、有限時間特異性の解析には予想以上の進展があった。まず、擬斉次コンパクト化を用いた爆発解の精度保証付き数値計算は、筑波大学の高安亮紀氏の協力も経て順調に完成した。また、一般の爆発レートを持つ爆発解の数学的特徴づけを導出し、それが絶滅・コンパクトン進行波解の漸近挙動と共通のメカニズムを有していることを提唱した。このメカニズムは一般に考察が困難な振動爆発解も同様に有していることを示し、微分方程式の特異的な解の漸近挙動に力学系の立場からメスを入れた。これらの数学的洞察は該当する対象の精度保証付き数値計算の基礎となる非常に本質的な結果であり、目標の一つである「様々な特異性に潜む類似性」を見出したものである。 そして、先行して「絶滅・コンパクトン進行波解」の精度保証付き数値計算法を行った。計画書で提唱した通り、爆発解の精度保証付き数値計算法をベースに、絶滅時刻やコンパクトン進行波解の台の大きさなど、定量的な情報も加味した厳密計算法が出来上がった。この裏には漸近挙動の評価法の幾何学的観点からの改良が2,3点ほど必要であったという、爆発解の考察時には意識しなかった事実も浮かび上がり、有限時間特異性の取扱いの注意点もあぶり出した結果となっている。 最後に、離散化波動方程式の爆発曲線については断念せざるをえなかった。これは波動方程式に対して空間のみを離散化したものと、時空全てを離散化した場合で元の方程式が有する構造の保存の有無が変わってしまう事情がある。我々のアプローチでは保存せず、大元の問題設定が間違っていたと言わざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度はfast-slow系の精度保証計算法に戻る。特に、遅い変数が多変数である場合の精度保証付き数値計算法の構築を完了させる。2017年度はプログラムの不具合、使用しているソフトウェアとOS、デベロッパツールの互換性の問題に酷く悩まされたが、2018年度は精度保証計算用のライブラリをCAPDからkvに変更し、コードの一新から始める。kvライブラリは爆発解の精度保証計算法にも用いていたC++言語のライブラリで、研究の方向性の統一も図れる。 多変数fast-slow系における計算法が構築出来れば、特異衝撃波の計算に移行する。これは多変数fast-slow系における爆発解の構成が基礎となっているため、自然な発展として考察するのは順当である。非双曲型不変集合を含む場合の精度保証計算法については、本研究課題に取り組みたいという学生の協力を得られることとなったため、相互協力のもと進めていく。 上記2つの課題の対象は爆発解などの有限時間特異性発現構造を内在するため、2017年度の取り組みをその準備と位置づけ、より見識を蓄えた上で課題に臨める。
|
Causes of Carryover |
旅費にも物品(書籍)購入にも非常に中途半端な額となったため、次年度の書籍購入等に充てる。 次年度も基礎的使途は学会や国際会議参加などのための旅費である。また、掲載が決まった論文のオープンアクセス代にも充てたい(2017年度出版された論文は、オープンアクセス等の制度がなかった模様)。
|
Research Products
(7 results)