2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of rigorous computation methods for singular trajectories in dynamical systems
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17K14235
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松江 要 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (70610046)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 精度保証付き数値計算 / 爆発解 / 力学系 / 燃焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、精度保証付き数値計算のバックグラウンドとなる数学理論、主に爆発解の力学系的特徴付けと、数学・数値計算技術の応用の1つも兼ねて燃焼の課題に取り組んだ。 爆発解は、先行研究における無限遠方に対応する地平線での平衡点の「双曲性」を崩した場合の幾何学的特徴付けを与え、力学系における標準的な精度保証付き数値計算の手法の新たな可能性を爆発解の観点から見出したものとなっている。具体的には、中心多様体及び分岐点の精度保証付き数値計算の必要性をフォローするものとの解釈ができる。また、独立して非線型項に未知関数の指数関数が含まれている微分方程式系にて、爆発解の精度保証付き数値計算法を構築した。これは、これまでの研究で行ってきた爆発解ダイナミクスの特徴づけにおけるひとつの制約:「ベクトル場は本質的に多項式とする」枷を外す一歩と位置付けている。 燃焼はエネルギー生成技術の基礎となる炎のダイナミクスの包括的理解に向けた課題であり、当初は本研究課題と独立したものとして実施していた。ところが、研究を進めるうちに精度保証付き数値計算の応用が可能な箇所を見つけ、適用に成功した。これにより、炎の特性としてこれまで数学的に確認できなかった現象、およびその解析のための数学理論が存在しなかった問題において、解の特性を厳密に記述することに成功し、既存の結果とは全く異なる炎のダイナミクスの描像を数学的に説明することができた。これはより現実的な炎の解析の問題、および実験や開発における現象理解の指針となり得るもので、精度保証付き数値計算の数学以外の分野への貢献として意味のあるものとなると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究計画に沿った進捗」としては、所属におけるプロジェクトとして新たに取り組み始めた燃焼に大幅な時間を割くことになり、マルチスケールダイナミクスの研究が計画通りに進んでいないのが現状である。代わりに精度保証付き数値計算の他分野における可能性を新たに見出せたこと、そこから精度保証付き数値計算の研究として重要な課題がいくつか見つかったことは、本研究の立場を総合的に判断した時にプラスに作用すると考える。また2017年度の懸案事項の1つであった「計算に使用するソフトウェアの変更」が成功し、自作のプログラムで過去の結果を再現することにも成功した。「計画通りに進める」という意味では随分な遠回りをしているが、分野の発展の可能性を俯瞰して見ると、継続的な課題解決および新たな課題の抽出、特に分野の細分化により陥りがちな「先細り」が起こりにくい状況が実現できつつあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
寄り道した課題も少しずつ基礎ができ、当初のマルチスケールダイナミクスの研究との関連性も発展的研究の取り組みも軌道に乗りつつあるので、残りの課題、主に「遅い変数が多変数であるfast-slow系の精度保証付き数値計算法」を完成させる。 非法双曲型不変多様体を含む系や特異衝撃波の計算は、どうしても上記の計算が基礎に位置付けられるため、これに集中させる。燃焼や爆発解は精度保証付き数値計算と独立した道筋があるため、まずはそちらに集中させ、精度保証付き数値計算の出番が来たら一気に適用を試みる。本研究は精度保証付き数値計算法、特に諸問題の数学的解析を行うためのいわゆる「武器」を作るものであるので、その武器を適用する機会があれば色々試し、その中で新たな結果や研究の方向性を見出すというスタンスで活動を継続する。
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Causes of Carryover |
別経費による長期海外出張(6ヶ月)が急遽入り、使用する機会が限られていたことが主な要因である。 他には、最終年度に国際会議(スペイン)への参加および講演者の招聘に回す意図もある。
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Research Products
(14 results)