2017 Fiscal Year Research-status Report
カテゴリカルデータ解析における潜在分布の推定に関する研究
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17K14240
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
生亀 清貴 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 助教 (30711593)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 正方分割表 / 潜在分布 / 対称性 / 確率密度関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に具体的に得られた研究成果としては、主に次の点が挙げられる: (1)Iki, Okada and Tomizawa (2018)では順序カテゴリ正方分割表において、分割表の背後に潜在的な等分散性を仮定しない2変量t分布が想定される場合に当てはまりの良いモデルを提案した。2変量t分布に従う乱数を発生させ、カットポイントを用いて分割表の作成を行い、様々なパラメータ設定の下でモデルの当てはまりをみるシミュレーションにより、提案モデルの有用性を示した。 (2)Iki and Tomizawa (2018)では、連続型の確率変数に対して、その確率密度関数の二重対称性、準二重対称性、周辺二重対称性を定義し、定理「確率密度関数に関して二重対称性が成り立つための必要十分条件は、準二重対称性および周辺二重対称性の両方が成り立つことでる」を与えた。さらに定理を多変数の確率密度関数に拡張した。いくつかの分布(正規分布やベータ分布)に対して定理を適用し、各二重対称性をパラメータ制約にて表現することに成功した。 (3)Iki and Tomizawa (2017)では、周辺同等モデルからの隔たりを測る尺度(Iki, Tahata and Tomizawa, 2011)を改良し、新しい尺度を提案した。モデルからの隔たりを測る尺度は未知であり、観測度数から尺度を推定する必要がある。新尺度ではこれまでより小サンプルの分割表データにおいて、より精度の良い推定値を得ることが可能となった。シミュレーションにより実際に推定精度が向上していることを確認し、有用性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の申請において、具体的に(ア)周辺研究分野の研究成果を調査する、(イ)連続変数と離散変数の変換について考察する、(ウ)連続型の分布と分割表データの関係を考察する、(エ)新たなモデルや、カットポイントを提示する方法の提案、(オ)シミュレーションや実データ解析を通じて、提案手法の有用性を調べる、という5つの課題を挙げた。 (ア)について:周辺研究分野の研究成果については調査をおこない、個人的な文献のデータベースを作成した。一部まだ調査しきれていない部分もあるので、今年度も引き続き取り組む予定である。(イ)と(ウ)について:連続変数と離散変数の変換については、知識の取得は進んでいるが、まだ実務の面でどのような手法がなされているかの確認が不十分である。またPC上で、いくつかのアイディアをシミュレーションしているが、残念ながら具体的な研究成果を得るにはいたっていない。(エ)について:この課題については研究実績の概要に述べたように、Iki, Okada and Tomizawa (2018)において新たなモデルの提案を行った。今年度も引き続き取り組む予定である。(オ)について:(エ)の研究成果ができ次第、取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の申請において、具体的に5つの課題を挙げ、(エ)新たなモデルやカットポイントを提示する方法の提案、(オ)シミュレーションや実データ解析を通じて、提案手法の有用性を調べる、の二つについては一定の研究成果を得ることができた。次年度は(ア)周辺研究分野の研究成果を調査する、(イ)連続変数と離散変数の変換について考察する、(ウ)連続型の分布と分割表データの関係を考察する、に重点的に取り組む予定である。理論的な確認を行った後、最終的には(エ)と(オ)にも触れる予定である。 次年度以降の予定については、日本計算機統計学会、統計関連学会連合大会、日本数学会などでの研究成果の発表を検討している。関連分野の学会・シンポジウムにも参加し、最新の研究成果の調査や、専門の先生とのディスカッションも行う予定である。さらに実務家との打ち合わせも行い、現場で分割表解析がどのように行われているかの情報収集も引き続き行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)は少額であるため、次年度の使用計画の物品費等で次年度の助成金と合わせて使用する予定である。 平成30年度は大掛かりなシミュレーションを実行するために、パソコンを購入予定である。また学会やシンポジウムでの研究結果の発表、学術雑誌の公開のために、研究発表旅費や消耗品(論文の別刷り)が必要である。
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