2017 Fiscal Year Research-status Report
星間雲から原始惑星系円盤に至る分子組成進化の理論的研究
Project/Area Number |
17K14245
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古家 健次 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (80783711)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素同位体分別 / 星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は分子雲から原始惑星系円盤に至るまでの揮発性物質(特に水素、炭素、窒素、酸素から成る物質)の進化を理論的に明らかにすることである。今年度は主に窒素とその同位体分別に注目した研究を行った。 星形成領域における窒素の研究は他の揮発性元素に比べて遅れており、窒素の主要存在形態(原子 or 分子 or 氷)すらよく分かっていない。その理由の一つは、窒素原子が星形成領域のような低温ガス中では直接観測が困難なためである。そこで本研究では、観測可能なアンモニア(NH3)の重水素濃縮度から窒素原子存在量を推定する理論的手法を開発した。この結果は論文にまとめ、学術雑誌に受理された。 窒素には質量数の異なる2種類の同位体, 14Nと15Nが存在する。隕石や彗星などの太陽系始原物質には元素存在度に比べ15Nが濃集している。また近年の観測から、分子雲のガス分子は元素存在度に比べ15Nに乏しい傾向にあることが分かってきた。以上の観測事実から,星(・惑星)形成領域において窒素同位体分別が起きることは明らかであるが,その機構についてはよく分かっていない。本研究では希薄な原子ガスから分子雲が形成する過程において、窒素同位体を含む化学反応ネットワークモデルの数値計算を行った。その結果、紫外線に対する窒素分子(N2)の自己遮蔽効果とダスト表面でのアンモニア氷の生成により、分子雲の段階で、ガスは15Nに乏しく、氷を含む固体は15Nに富むことが分かった。この状態は氷の昇華が起こるまで保持されるため、元素存在比と比較して分子雲のガス分子では15Nが少ないこと、および惑星系の材料となりうる固体物質では15Nが多いことが同時に説明できる。この結果は論文にまとめ、学術雑誌に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
星形成領域における窒素の主要存在形態および窒素同位体分別に関する理論研究を推進し、それぞれにおいて重要な結果を得ることができた。また窒素の主要存在形態に関しては、本研究の成果を基に観測グループとすでに共同研究を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
近年のALMAによる観測から、ダスト成長が原始惑星系円盤内の揮発性物質の分布に大きな影響を与えることが示唆されている。そこで単純化したダスト成長モデルと化学進化モデルをカップルした数値計算を行い、ダスト成長が円盤内揮発性物質分布に与える影響を理論的に調べ、観測との比較を行う。
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Causes of Carryover |
学術雑誌に投稿していた論文の受理が3月にずれ込み、掲載料の支払いが2018年4月以降となった。次年度使用額は受理された論文の掲載料支払に使用する。
研究成果発表のための旅費と論文掲載料の支払いに使用する。
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Research Products
(9 results)