2017 Fiscal Year Research-status Report
Revealing the formation mechanism of the Milky Way stellar halo based on chemical abundance analyses of large datasets of metal-poor stars
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17K14249
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石垣 美歩 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (30583611)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 銀河系 / 金属欠乏星 / 元素合成 / スペクトル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、金属欠乏星の大規模元素組成データに基づいて銀河系恒星系ハローの起源を明らかにすることである。本年度の目標は既存の恒星分光データから、どのようなことが分かるか、超新星爆発元素合成理論モデルとの比較と独自の解析手法による系統的な解析から明らかにすることであった。そのために主に以下の3つの課題に取り組み、一定の成果が得られた。 (1)金属欠乏星の元素組成に基づく初代星超新星爆発への制限:金属欠乏星の元素組成を解釈するにあたり、その主な元素汚染源である宇宙初期の天体、特に初代星による元素合成の理解が欠かせない。研究代表者を含む研究チームでは、超金属欠乏星(鉄組成が太陽の1000分の1以下)の観測データを集約し初代星元素合成モデルと比較するプロジェクトを完成させ、アストロフィジカルジャーナルで論文を出版した。この研究の成果を11月にメルボルンで開催された国際研究会で発表した。 (2)すばる望遠鏡HDSアーカイブデータに基づく元素組成解析:本課題の最終目標である中分散分光データの解析手法を確立するうえで、結果の信頼性を確認し、誤差を正しく評価することが欠かせない。そのためにより高精度の元素組成導出が可能な高分散分光データを集約と解析に着手した。まずはすばる望遠鏡高分散分光器(HDS)で過去に取得されたデータに一様な解析を施し、スペクトルの規格化と元素組成解析を実施した。本年度は一部の恒星サンプルについて、Gaia衛星で得られた天体位置観測情報を組み合わせることで、恒星の物理パラメータ(温度、重力等)と元素組成について精度の高い結果を得られることを確認した。 (3)すばる望遠鏡PFSで得られる分光データと物理量測定のシミュレーションのプロトタイプ作成:中分散分光データの解析準備のため、様々な恒星の物理パラメータと元素組成について合成スペクトルを計算するコードを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度はスローンデジタルスカイサーベイのデータをもとにした中分散分光データ解析を実施する予定であった。しかし専門家との議論の中で、まずは解析の基準となる、より高精度の恒星物理パラメータ、元素組成データの構築が極めて重要であることを認識するに至った。そのため、当初の計画を変更して、すばる望遠鏡高分散分光(HDS)で取得された高分散分光データの解析に着手することにした。解析は予想以上に多くの誤差要因を検証しながらの作業となり、研究時間を要した。しかし四月末にガイア衛星からの天体位置情報が一般に公開されることで、誤差を大幅に改善できる見込みである。ガイア衛星からのデータを加味した上で初期成果をまとめる準備を進めている。これらの解析は本課題にとって技術的に重要なだけではなく、メインの目標である銀河系形成過程の解明について一定の示唆が得られることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から着手したすばる望遠鏡HDSによる高分散分光データをガイア衛星による天体位置情報(距離、固有運動)と組み合わせて、太陽近傍にある金属欠乏星の化学動力学解析を実施し、銀河系形成過程への示唆を得る。成果を論文にまとめ、国際研究会で発表する。また解析手法を吟味するため、恒星分光学の専門家と議論するための国際ワークショップ(4月、北京)に参加する。得られた金属欠乏星スペクトルと物理パラメータ、元素組成測定値を、スローンデジタルスカイサーベイやすばる望遠鏡PFSで取得される見込みの中分散分光データ解析の際の標準星データセットとして整備する。昨年度に引き続きすばる望遠鏡PFSで得られる分光データのシミュレーションと解析手法の開発を推進する。
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Causes of Carryover |
当初の予定では恒星分光解析コード開発を実施するために大型計算機を購入する予定だった。しかし実際は所属研究機関で保有している計算機が予定していた計算に適切であることが分かったため、新たな大型計算機の購入を中止した。支出しなかった金額の一部は、当初は予定していなかったすばる望遠鏡での観測のためハワイへ渡航した際の旅費として使用した。次年度はこの金額を、分光データ解析の専門家が集まる国際ワークショップ(4月、北京)へ参加するための旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)