2018 Fiscal Year Research-status Report
極度に強い輝線を示す銀河を用いた宇宙初期の銀河進化と宇宙再電離の観測的研究
Project/Area Number |
17K14257
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
小野寺 仁人 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (40778396)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 銀河進化 / 銀河 / 光赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度までに、広帯域フィルターによる撮像データを用いて、静止系可視光にある[OIII]5007輝線がきわめて強い赤方偏移(z)3から3.7程度の星形成銀河(EELG)を効率よく選択する手法を確立した。2018年度は、すばる望遠鏡のMOIRCSを用いて分光学的に同定された19天体の赤方偏移3を越えるEELGについて、静止系可視光輝線および、広帯域フィルターの測光データを用いて詳細な性質を調査した。これらの天体のうち、特にz=6-10程度で起きたとされる宇宙再電離との関連性で興味深いのは、恒星質量が10億太陽質量よりも小さな低質量銀河である。低質量EELGは、同赤方偏移帯の平均的な星形成銀河に比べ、恒星質量に対して星形成率が高く、高い効率でよりバースト的な星形成をおこなっている。[OIII]/[OII]の輝線比から、10億太陽質量より低質両側ではすべての天体が[OIII]/[OII]輝線比が3より大きくなっており、近傍銀河での典型的な値が0.3程度であることを考えると、z>3のEELGはきわめて高いイオン化パラメータを持つことがわかる。また、R23パラメータを調べることでガスの金属量が近傍の同恒星質量帯の銀河に比べると10分の1程度と低いことが示唆された。Hβ輝線と紫外線の光度から電離光子生成効率ξを求めたところ、先行研究で調べられているライマンα輝線銀河と同様の値を示すことがわかった。先行研究ではさらにξとライマン連続光脱出率、[OIII]輝線の等価幅の相関が報告されているが、我々のEELGでも同様に[OIII]輝線の等価幅が大きいほどξが大きくなる傾向が見られている。本研究ではライマンα輝線強度とは独立に[OIII]強度を元に得られた相関であるため、これによって、これまでの研究と相補的に、宇宙再電離を担う銀河の探査法のみならずその物理的な性質が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は2017年度に得られていた初期結果をより詳細に解析した。たとえば、非常に強い輝線強度の影響を取り入れた上でのスペクトルエネルギー分布からの恒星質量の推定などである。また、近年、高赤方偏移宇宙のダスト減光の補正が大きな議論になっており、その検討も詳細におこなった。さらに、輝線強度についてもダスト減光の補正やフラックスの上限値、等価幅の測定などを上記の検討の結果を用いながらすべてやり直したことで、様々な物理量をより高い信頼度で調べることができた。また、電離光子生成効率ξを詳細に調べることは当初予定していなかったが、研究分野の進展が早く、精力的に調べられはじめているため、我々のサンプルについても同様の解析をおこなったところ、興味深い結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
我々のEELGサンプルは高赤方偏移の銀河研究で頻繁に用いられているライマンαの情報は一切用いてないが、[OIII]輝線強度からライマン連続光の漏れ出しが示唆されること、また、この漏れ出しがあると特徴的なライマンα輝線プロファイルになることが理論的に提唱されていることから、[OIII]輝線がきわめて強い銀河のライマンαプロファイルを調べることがライマン連続光の漏れ出し、すなわち宇宙再電離に直接使われた光子の量を間接的に推定する上で重要である。一方、ライマン連続光の直接検出については、その暗さ、天体ごとに漏れ出し率に非常に大きなバラツキがあることから、スタッキング解析をおこなうことが推奨されてないという先行研究が発表されているため、強いと期待されるライマンα輝線を詳細に調べることが現時点では実現可能性が高いと考え、2018年度中にヨーロッパ南天天文台VLTのXSHOOTERを用いてライマンα輝線を調べる観測提案を提出した。現在採否の結果を待っているところである。これまで得られた研究成果については論文にまとめ、これまで以上に国際研究会での報告等をすすめていく。
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