2018 Fiscal Year Research-status Report
LHC-ATLAS実験における高統計データを用いた超対称性粒子探索
Project/Area Number |
17K14268
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 智之 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (50749629)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙の始まり / 素粒子標準模型 / 超対称性 / LHC加速器 / ATLAS実験 / エレクトロニクス / トリガーシステム / FPGA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では設計値の数倍にビーム強度を増強したLHC加速器を用いたATLAS実験において、新しいトリガーシステムを導入することで背景事象を大幅に削減し、トリガー頻度を効果的に抑制する。それによって取得を可能にした高統計データを用いて、超対称性粒子の発見に挑む。 本年度は高ビーム強度の実験に向けて、新しいミューオン粒子トリガーシステムの開発を進めた。トリガー判定アルゴリズムの核の部分の実装を終え、実験本番に向けてさらに洗練されたシステムに仕上げた。特にトリガ―システムの構築で必須となる時間較正手法を考案し、より精確な時間較正を可能にする機構をシステムに導入した。また上流のエレクトロニクスと接続試験を通じて、データフォーマットの最終調整をし、データ転送試験を行った。これは実験本番のトリガーシステム構築のための大きな進捗といえる。2019年度の始めに実験現場に開発したトリガー判定ボードを設置し、本番用のシステムの構築に取りかかる。 超対称性粒子グルイーノ探索に関しては、新しく機械学習を用いた多変量解析に取り組み、さらに質量の高い領域を探索できる解析手法の開発をした。この手法により従来の探索では利用していなかった終状態の各ジェットの横運動量の相関を用いて、信号の探索感度をさらに向上させることに成功した。その結果、最大2.3 TeVの質量までのグルイーノ探索を可能にする解析を確立できた。機械学習を超対称性粒子の探索に適用する上で、特定のモデルに過度に最適化することを避けるようにし、幅広い領域の探索が可能になるようトレーニングを特に工夫した。今後、2018年までにATLAS実験で取得した大統計データを用いた探索結果の公表を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しいトリガ―システム開発に関する本年度の計画は、トリガー判定ボードへのアルゴリズムの実装と動作試験であった。現在までにアルゴリズムの実装と動作試験は達成でき、運転本番に向けてシステムの仕上げを行う段階まで進めることができた。また上流システムとの接続試験を通じて実験本番に向けての問題点を洗い出すことができ、解決策を講じることもできた。したがって計画通りに研究を遂行できていると評価できる。 超対称性粒子グルイーノ探索の本年度の計画は、さらに質量の重い領域を探索するための新しい手法の開発に取り組むことであった。現在までに機械学習を効果的に取り入れた新しい解析手法を確立でき、探索感度をグルイーノ質量に関して最大2.3 TeVまで伸ばすことに成功した。したがって計画通りに研究を遂行できていると評価できる。 これらの点を考慮し、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに研究を遂行する予定である。 新しいトリガ―システム開発に関する来年度の方針は、トリガー判定ボードを実験現場のATLAS検出器システムに設置し、本番用のシステムを構築する。まず単独で動作試験を行い正しく動作することを確認できたら、上流・下流のエレクトロニクスと接続する。上流の情報を使って、正しくトリガー判定を行えることを確認し、さらに下流にその信号が適切に送信できることを確認する。もし動作に問題を発見した場合は、実験室レベルに戻り調査し解決策を講じる。 超対称性粒子グルイーノ探索の方針は、2018年までにATLAS実験で取得した140 /fbの大統計のデータを用いた結果を公表することである。2018年度に開発した機械学習を積極的に用いた解析手法を導入し、従来の実験感度を大きく上回る探索を実現し発見を目指す。
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Remarks |
上記2つのWebページは申請者のミューオントリガ―システムの改良に関する研究が、ATLAS実験共同研究者数千人の中で特に優れた功績を表彰されたことを示すものである。
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Research Products
(11 results)