2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14281
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
泉 圭介 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 助教 (90554501)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 因果構造 / 時間発展のユニタリ性 / 重力理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、広い意味での「因果律」をもとに、量子重力理論を探ることである。特に、古典的・量子的、両側面からこの問題を捉えることを目標としている。古典論と量子論、それぞれの分野において以下の研究を行った。 まずは、古典重力理論の研究として、時空の因果律により定義されるブラックホールの近傍に生じる強重力場の研究を行った。具体的には、一般相対性理論が成り立つ場合において、静的ブラックホール解で定義される光子面を、定常時空の場合にも議論できるようにその定義を拡張した。いくつかの物理的条件下では、ブラックホール地平線面積に関する不等式である「ペンローズ不等式」に類似する不等式を導くことができた。また、動的な場合にも適用できる光子面の一般化である緩捕捉面との関係についても調べた。 上記の古典重力の研究と並行して、因果律の量子的側面である時間発展のユニタリ性について研究を行った。量子重力理論を見据えて、一般相対性理論に曲率の高次項を加えた理論のユニタリ性について研究した。この理論は繰り込み可能な理論であることが知られており、繰り込み可能性とユニタリ性の関係を見る観点でも重要な研究である。この研究では、物質場が重力子を通して散乱される過程を考え、その散乱の大きさがユニタリ性を有する理論が必要とする条件(ユニタリ性限界)を満たすことを示した。これは、繰り込み可能性の条件とユニタリ発展に必要な条件が一致するという予想と合う結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、古典論・量子論の両分野から、因果律をキーワードに量子重力に迫ることにある。特に、古典論と量子論の両分野から研究を進めるところを重要視し、それらの間の関係性を見つけだすことが目標である。古典重力理論と量子論はそれぞれが専門的であり奥深い理論であるが、その双方の深い知識・考察が必要となる研究である。 初年度の研究では、古典重力理論、場の量子論の研究を行い、それぞれについて専門的な結果を得ることができた。また、それぞれの分野でその専門家と共同研究を行った。古典論・量子論の両分野における研究の基礎を築くことができたことから、初年度の研究進歩状況は順調であるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、広い意味での「因果律」というキーワードをもとに、古典重力理論と量子論を研究して行くことにある。「因果律」というキーワードを通して両分野の理解を深め、それをもとに両分野の関係性を導きびき出す。この関係性から、量子重力のヒントが生まれると期待している。 現段階では、各々の分野における「因果律」をキーワードにした研究を進めている。今後の研究では、初年度から進めている古典重力の因果構造や量子論の時間発展のユニタリ性、各々のより深い理解を目指すことに加えて、それらの関係性を見つけることを目指す。
|
Causes of Carryover |
当初の予定に比べ、旅費が少し抑えられた。これにより次年度使用額が生じた。 繰り越し分については、滞在費3-4日分相当の金額であるため、次年度の出張の日程を数日のばし、より深い研究交流のために使用する。もともと2018年度使用分として請求した助成金は、計画通りに使用する。
|
Research Products
(5 results)