2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14282
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒柳 幸子 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (60456639)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波 / 宇宙ひも |
Outline of Annual Research Achievements |
重力波は、天体物理検証の新しい窓となるだけでなく、宇宙初期の相転移の名残として存在している可能性がある一次元の位相欠陥「宇宙ひも」を探索する強力な手段である。近い将来には、日本のKAGRAをはじめとする重力波直接検出実験や、電波望遠鏡を使って重力波の間接的検出を目指すパルサータイミングを用いて、現存の探索法よりも圧倒的に良い感度で宇宙ひもを検証することができると期待されてる。本研究課題では、重力波直接検出・パルサータイミングを用いて宇宙ひも起源の重力波を探索するための体制を、理論・データ解析の両面において構築していくことを目標にしている。
初年度である本年は、日本の重力波実験KAGRAのコラボレーションに参加し、宇宙ひもからの重力波バーストを探索するための、データ解析コードの開発を進めた。コードはKAGRA独自のデータ解析ライブラリKAGALIを用いて作成し、マッチドフィルター解析に基づいて、特徴的な周波数依存性を持つ宇宙ひもからのシグナルを探し出すコードの基礎部分の開発を済ませた。この成果はKAGRAのface-to-face meetingのポスターセッションで発表された。これにより次年度に擬似データ解析を行って新しい解析法をテストできる体制が整ったと言える。
また、パルサータイミングの新たな可能性を広げるための理論研究として、パルサーを用いて低周波数帯の重力波を検出する方法を考案した。従来のパルサータイミングでは、電波パルスの到着時間のずれを測ることで重力波に制限を与えているが、本研究ではずれの時間変化に着目し、重力波による四重極パターンを探索することで、低周波数の重力波に制限を与えることができることを示した。成果は論文としてまとめられ、国際誌のMonthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載が決まっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、①宇宙ひもからの重力波バーストの波形の理論的計算、と②直接検出実験に向けたデータ解析体制の準備、が予定されていた。 ①に関しては本年度はほとんど取り組むことができなかった一方で、次年度に予定していたパルサータイミングに関する理論研究を前倒しして進めた。こちらの研究はすでに成果を論文として仕上げるところまで済ませており、当初予定していたバースト波形の理論研究を行う時間は次年度に確保できるため、研究計画全体としては遅れはないと考える。 ②に関しては計画通り、直接検出における宇宙ひも探索のデータ解析コードの基礎部分の構築を済ませることができ、計画通りに進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度に完成した宇宙ひも探索のデータ解析コードを基盤にして、大量に見つかる偽の(検出器のノイズ由来の)シグナルを選別し、本当の重力波シグナルを取り出していくための新たな統計処理の方法を考案する。また、同時にマッチドフィルター解析に必要な、波形のテンプレートの精度を上げるための理論研究を進める。この2つが完成することで、これまでよりも効率良く宇宙ひものシグナルを取り出していくことができる。
さらに、パルサータイミング実験においても、宇宙ひも起源のバースト重力波を探索するためのデータ解析体制を作っていく。まずはシミュレーションで疑似的に宇宙ひも起源重力波のデータを作成し、データ解析に必要な計算コードや統計処理方法の構築と検証を行う。データ解析体制が確立した後には、実際のパルサー観測のデータを解析し、宇宙ひもの重さや存在量に新しい制限を与えていく。
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Causes of Carryover |
初年度に計算用の大型計算機を購入する予定であったが、所属する研究施設の計算機の空いたスペースを利用することができるようになったため、新しい計算機の購入を見送った。来年度以降の研究では、計算量が増えることが予想されるため、繰り越し分は現在使っている計算機の増強に使っていく予定である。
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Research Products
(5 results)