2018 Fiscal Year Research-status Report
Computational approach to the quantum theory of gravity
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17K14285
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
花田 政範 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 訪問研究員 (40626735)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 場の量子論 / 超弦理論 / 量子重力 / 計算物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は5件の論文を査読付き専門誌に投稿し、4件が出版済み、残り1件は査読中である。また、2017度に投稿した論文が何件か2018年度に出版された。また、ドイツのレーゲンスブルグ大学とイェーナ大学の研究者との共同研究を新たに立ち上げ、行列量子力学と二次元超対称ゲージ理論の相構造に関する新たな結果が得られた。これは近日中に論文として発表する予定である。
2018年度に得られた結果として特に興味深いのは、JHEPに発表した論文(タイトルは"Partail Deconfinement")で議論した、ゲージ理論の非閉じ込め相転移の一般的な構造である。この論文では、ゲージ理論と弦理論の双対性に基づく非閉じ込め相転移の微視的な記述と他の複雑系の関係、特にアリの行列の生成メカニズムとの本質的な等価性を指摘し、アリの行列の生成モデルの解析からゲージ理論の三種類の基本的な相図が得られること、アリのモデルの解釈を翻訳することでゲージ理論の相構造についてこれまで知られていなかった基本的な性質が理解できることを示し、更に新しい解釈の定量的な証拠を(アリの理論とは無関係に)ゲージ理論の枠内で提示した。具体的にはSU(N)理論の非閉じ込め相転移がSU(2)がdeconfine -> SU(3)がdeconfine -> ... -> SU(N)がdeconfine、と段階的に起こることを指摘した。このことから、シュバルツシルトブラックホールと対応する比熱が負の相の存在や、Gross-Witten相転移の物理的な意味(「部分的な非閉じ込め」から「完全な非閉じ込め」への転移)を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。数値シミュレーションと理論的研究の双方で新しい結果が得られ、論文として発表できている。シミュレーションコードは、アメリカ、ドイツのグループと共同でGPUを用いて高速化できた。ブラックホールの蒸発過程の研究は、ゲージ理論を厳密に取り扱う(部分的な非閉じ込め相を調べる)という、当初の研究計画(有効模型を構築して調べる)よりも優れた方針に転換し、順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
GPUを用いて高速化したシミュレーションコードを用いてゲージ重力対応のさらなる精密検証を推し進める。古典重力に対する弦理論的な補正が小さく、理論的により精緻な取り扱いが可能なパラメーター領域をシミュレーションできる段階に入っている。
ブラックホールの蒸発を理解するために、部分的な非閉じ込め相を数値的手法と解析的手法の双方を駆使してより深く理解する。
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Causes of Carryover |
3月末に終了した出張の手続きが間に合わなかったため。
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Research Products
(17 results)