2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14286
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
齊藤 遼 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70781392)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 修正重力理論 / スカラーテンソル理論 / 第5の力 / 重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究では、8月17日にあった中性子連星から放出される重力波と電磁波の同時観測を受けて、一般的なスカラーテンソル理論に対してこの重力波観測から課される制限と、そうした制限と整合的なスカラーテンソル理論における「第5の力」の働きについて調べた。 8月17日にあった中性子連星からの重力波観測においては、ほぼ同時に同天体からの電磁波が観測された。これは、重力波と電磁波の伝播速度がかなりの精度で一致していることを意味する。これを受けて、本研究ではそれまでに定式化されていた一般的なスカラーテンソル理論のクラスを与えるDHOST(Degenerate Higher-Order Scalar-Tensor)理論の枠組みの下での重力波伝播速度を調べ、上述の観測結果と整合的なDHOST理論を与えた。さらに、得られた整合的な理論の下での一般的な「第5の力」の働きを調べ、それまでDHOST理論の特殊な場合であるGLPV理論においては知られていた有限密度領域におけるVainshtein機構(第5の力の遮蔽機構)の破れが、こうした理論でも起こることを見出した。得られた重力ポテンシャルは、これまで知られていた破れの項に加え、新たな項が加わっており、それらの間には関係がある。こうした関係と、天体観測やHulse-Taylor連星パルサーの観測などから課される重力法則に対する制限を組み合わせて、将来的にはかなり単純なスカラーテンソル理論にまで制限することが可能であることを議論した。上述の研究に加えて、第5の力の遮蔽機構の一種であるカメレオン機構の非一様系における働きや宇宙マイクロ波背景放射の偏光を精密に計算するプロジェクトも並行して進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は重力波の観測結果を受けて、当初の予定を変更し、まずスカラーテンソル理論における重力波の伝播と第5の力の働きに関する研究を行なった。順番は変更されたものの、本研究は当初から予定されていたものであり、第1の研究計画である「遮蔽機構に関する研究」については、順調に進んでいると言える。一方で、第2の研究計画である観測的検証法、特に宇宙マイクロ波背景放射の偏光の研究については、平成29年度は所属の移動が重なったことも影響して、やや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
第1の研究計画である「遮蔽機構に関する研究」については、引き続き重力波観測と整合的なスカラーテンソル理論の研究を中心的に進めていく。現在は平成29年度の研究で見出したVainshtein機構の破れをスカラーテンソル理論に含まれるスカラー場と物質との結合の観点から捉え直す研究を進めている。本研究を通して、上述のVainshtein機構の破れをはじめとした、スカラーテンソル理論における重力法則に見られるいくつかの特徴に対して、より深い理解を得ることを目指す。こうして観測と整合的な理論をできる限り絞り込んだうえで、より困難な動的な系や非球対称な系におけるVainshtein機構の働きに関する研究に取り組むことを予定している。 一方で、第2の研究計画の宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光の研究については、すでに定式化の部分はひととおりの結果が得られている。まずは、こうした結果を早い段階でまとめる。その後、計画にある摂動論による重力ポテンシャル進化の評価やその結果のCMB計算への組み込みを進めていく。
|
Causes of Carryover |
平成29年度に山口大学への移動があり、大学内部より資金援助が得られたため。残額については、宇宙論関連の書籍の購入に使用する。
|
Research Products
(7 results)