2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14286
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
齊藤 遼 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70781392)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 修正重力理論 / 宇宙マイクロ波背景放射 / 第5の力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度の研究では、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の非線形レベルでの精密計算に必要となるcurve-of-sight法の偏光への拡張に主に取り組んだ。宇宙マイクロ波背景放射の持つ異方性は、宇宙がどのように発展してきたかを探るための主要な情報源となっている。特に異方性は、CMB光子が観測点に到達するまでに受ける重力の効果によって歪められ、その歪みから重力理論に対する制限も与えることができる。こうした宇宙マイクロ波背景放射に対する重力の効果は、弱重力レンズ効果や時間遅延効果など幾つか存在するが、これらは近似的かつばらばらな方法でこれまで取り扱われてきた。そのため、その評価の精度や、異なるグループが行なった評価結果の関係などに不明瞭な点があった。それに対して、こうした重力効果を系統的かつ厳密に取り扱うことを可能とする方法が、本研究代表者らによって開発されたcurve-of-sight法である。平成31年度の研究では、すでにCMB温度異方性に対して定式化されていたcurve-of-sight法を、一般にCMBの偏光異方性を計算できよう拡張を行なった。また、拡張されたcurve-of-sight法の応用として、標準宇宙モデルであるラムダCDMモデルにおいて、重力効果一般によって生み出されるBモード偏光の大きさの評価を行なった。本研究計画の結果は、本研究計画の主題である修正重力理論の検証に応用できるだけでなく、インフーレションなどによって生み出される原始重力波の研究にも役立てることができると期待される。さらにこれらの研究と並行して、第5の力の遮蔽機構の一種であるカメレオン機構が、非一様系やインフレーションとの統一モデルにおいてどのように働くかを調べる研究も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度は、curve-of-sight法の偏光への拡張に関するプロジェクトを進めた。こちらについては、理論的な整備は終了し、その標準宇宙モデルへの応用は近くまとめる予定である。一方で、平成30年度に行なっていた運動する天体が生み出す第5の力の研究は、一部計算結果で信用ができない部分があり、結果が発表できていない。そちらについては、さらなる精査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、これまで得られたcurve-of-sight法に関する研究成果をまとめる。さらに拡張されたcurve-of-sight法をこれまで研究してきたDHOST理論など修正重力理論に適用することにより、それらの理論に対してどのような制限が得られるかを調べていく。また、運動する天体が生み出す第5の力の研究においては、既存の知られている結果と一致していない点がある。既存の結果と本研究計画で得られた結果をともに精査し直し、不一致の原因を調べていく。
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Causes of Carryover |
予定していた国際会議の日程と大学で行われた集中講義が重なったこと、および年度末に起きたコロナ禍により出張予定に変更が生じたため。コロナ禍の状況に依存するが、翌年度使用となった分は平成31度から令和2年度へ延期となった会議への参加に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)