2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14286
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
齊藤 遼 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70781392)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / 修正重力理論 / 第5の力 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の研究では、前年度に引き続き、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の精密計算に必要となるcurve-of-sight法の偏光への拡張に主に取り組んだ。CMB光子は宇宙初期のプラズマから放たれたのち、我々に届くまでに弱重力レンズ効果や時間遅延効果といった全景の重力ポテンシャルによる影響を受ける。CMB光子の時間発展を記述する基礎方程式であるボルツマン方程式を、こうした重力の効果込みで解くことは従来困難であった。 本研究代表者らは、curve-of-sight法と名付けた新たな方法を開発することで、この困難を解決し、全景の重力ポテンシャルの影響を系統的かつ厳密に取り扱うことを可能にした。令和2年度の研究では、理論面の詳細を詰め、定式化を完成させた。さらに、curve-of-sight法の応用として、標準宇宙モデルであるラムダCDMモデルにおいて、重力の効果によって生じるBモード偏光の大きさを評価した。その結果を従来の方法による評価結果と比較し、近い将来に計画されている原始重力波探査計画においては、従来の方法による評価は十分な精度を持っていることを示した。また、f(R)修正重力理論における第5の力の遮蔽機構であるカメレオン機構の研究も行った。第1の研究では、現在の加速膨張だけでなく、インフレーション(宇宙極初期の加速膨張)も記述するよう拡張されたf(R)理論において、カメレオン遮蔽機構がどのように働くかを調べ、拡張によって遮蔽の度合いに定量的な変化は生じないことを確認した。第2の研究では、時間依存する環境下での遮蔽機構の働きを見るため、球対称摂動を受けたポリトロープ球におけるカメレオン機構を調べた。結果として、時間依存性によって通常の重力と同程度の強さの第5の力が生じることがあるが、天体全体のダイナミクスには影響しないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
curve-of-sight法の偏光への拡張に関するプロジェクトに予定より時間を要し、運動する天体が生み出す第5の力に関するプロジェクトを予定した年度に終えることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
curve-of-sight法の偏光への拡張に関するプロジェクトは既に完成し、すでに論文投稿も行っている。今後は、運動する天体が生み出す第5の力に関するプロジェクトに注力し、完成を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって現地出張の予定していた打ち合わせや会議出席を、全てリモートで行ったため。状況が改善した場合には、翌年度使用となった分は令和2年度に予定していた出張に充てる。状況が改善せず、出張が難しい場合には、旅費に予定した分をリモート環境の整備や計算機の購入に充てる。
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Research Products
(4 results)