2020 Fiscal Year Research-status Report
格子QCDハドロン間相互作用によるエキゾチック・ハドロンの構造と生成の研究
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17K14287
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池田 陽一 九州大学, 理学研究院, 准教授 (90548893)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 格子QCD / 深層学習 / 機械学習 / 人工知能 / ハドロン相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、高エネルギー実験の発展により、今後可能となると予想される、チャームクォークを含むような中間子-核子相互作用の計算に向けてのコード開発を行った。チャームクォークを含む系とストレンジクォークを含む系の比較から、中間子-核子相互作用におけるカイラル対称性および重いクォークの対称性の役割を明らかにすることが目的である。具体的には、富岳を使った物理的クォーク質量でのチャームクォークを含む反D中間子-核子間相互作用の計算コードの開発である。これまでに計算実績のあるストレンジクォークを含む系であるK中間子-核子間相互作用の結果と一致することを確かめ、そのまま反D中間子-核子間相互作用の計算に用いることができる段階まで進めた。反D中間子-核子間相互作用は、J-PARC実験や重イオン衝突実験で調べることが、将来的に可能となると予想され、それに先駆け理論的予言を行う。 また、これまでの重イオン衝突実験で報告されたエキゾチックハドロンの候補について、どれが尤もらしいのかを調べるために、まずは精密な実験データが存在する単チャンネル核子散乱について、束縛状態と仮想状態を区別する深層学習プログラムを完成させた。状態は散乱振幅の複素エネルギー平面上での極の位置で決まるため、散乱理論に忠実に、散乱振幅の解析性を正しく満たす教師データを作成した。約400万の教師データを深層学習により学習させることで、核子散乱実験データやこれまでの部分波解析結果を95%以上の確率で正しく再現できることが確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍において、予定していた国際会議はキャンセル・延期され、これまで得た成果を広めることができなかった。一方、研究課題の進展には問題なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実験で報告のあったエキゾチックハドロンの候補は、単チャンネルのハドロン散乱としてではなく、チャンネル結合ハドロン散乱におけるピークとして報告されている。これらのピークが全てエキゾチックハドロンに対応する共鳴状態であるかどうかは自明ではない。今後は、深層学習の方法をチャンネル結合ハドロン散乱へと拡張させ、散乱詩論に忠実に教師データを作成し、実験で観測されたピークに隠された状態の分類を行う。 また、これまで実験では報告されたことのない、反D中間子-核子間相互作用の格子QCD計算を富岳の本格ランに合わせて行い、この相互作用により生成される状態も調べる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で招待されていた国際研究会がキャンセルされた。来年度に国内の研究者との議論を活発に進めるための、旅費やセミナーに割り当てを行う。
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Research Products
(3 results)