2019 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study of dense nuclear and neutron-star matter with the precise many-body calculations
Project/Area Number |
17K14298
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宮津 剛志 東京理科大学, 理工学部物理学科, 助教 (00779209)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 核物質状態方程式 / 対称エネルギー / (非)対称核物質 / 中性子星物質 / 理論核物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高精度多体計算による相対論的核物質模型をさまざまな物理現象に適応し、「地上実験」から得られる一様核物質や有限原子核の結果と「天体観測」から得られる中性子星の特性を考慮した上で、両者を統一的に理解することである。 今年度は、研究実施計画に従い「地上実験」関する研究を中心に行い、その成果を査読付き論文誌や国際会議などで発表した。昨年度に引き続き、重イオン衝突などから考えられる「高密度状態における核物質の性質」を理論的に解明することを主として研究を遂行した。 「地上実験」に関して、高密度状態における核物質性質の解明を中心に以下の2通りの方法で研究を行った。一点目は、相対論的多体計算自体に着目し、これまで一般的に広く利用されている平均場(ハートレー)近似を、ハートレー-フォック近似にまで拡張し、さまざまな高密度状態における核物質の物性を計算した。特に、核子の自己エネルギーにおけるベクター要素が高密度で大きく寄与することを示し、重イオン衝突実験の結果から得られる核物質の対称エネルギーを精度よく再現できることが分かった。 2点目は、相対論的平均場模型を用いて、ロー中間子だけではなくデルタ中間子までを考慮した中間子混合の影響を調査した。ローレンツ共変を保持した形で、非線形ポテンシャルにさまざまな中間子混合を導入し、飽和密度付近における核物質の性質に関する研究を行った。ここでは、核物質の対称エネルギーにおける3次のオーダー(非圧縮率)の影響を調べた。 さらに、ストレンジネスの影響までを考慮した核物質状態方程式の作成を目的とした「天体観測」に関する研究を遂行している。連星中性子星の衝突・合体現象から観測された重力波データを用いた中性子星の潮波変形や中性子星の最大質量の情報から、核物質状態方程式を制限するをともに、核物質の性質についても制限可能であること明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症対策の影響により、教育に充てる時間が増加したため、当初の予定よりも研究時間の確保が難しくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、「地上実験」と「天体観測」の両者を繋ぐ段階に入る。また、研究計画作成当初にはなかった新たな観測結果である重力波データによる中性子星の潮波変形の影響を考慮するために、現在進行中のストレンジネスの影響までを考慮した核物質状態方程式の作成を目的とした「天体観測」に関する研究を行う。その後、多体計算の高精度化に向けて、フォック項の影響を組み込むとともに、クォークによる核子構造も考慮した核物質模型を構築し、その特性を調査する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策の影響により、参加を予定していた会議が中止となったため、次年度使用が生じてしまった。今年度の交付額と実支出額の差額として生じた次年度使用額は、大型計算機の購入と成果発表に使用する計画である。これは、多体計算用プログラムの高速化が当初の予定以上のものであったため、昨年度に引き続き、今年度の購入を見送ったことによるものである。
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