2017 Fiscal Year Research-status Report
共形ブートストラップで解く量子色力学のカイラル相転移現象
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17K14301
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
中山 優 立教大学, 理学部, 准教授 (40722195)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共形場理論 / QCD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の眼目は共形対称性を元にしてQCDのカイラル相転移などの物理的に重要な相転移の性質を求めることである。本年度は、次の3点に注目して研究した。1.共形対称性を持った場の理論の性質を深く理解する。2.QCDのカイラル相転移が持つ対称性の性質を理論的に理解する。3.QCDの相転移に対して共形ブートストラップを適用することを考える。 1の点については、射影空間上での共形場理論の性質や、あるいはポワンカレ対称性がないような場の量子論においての共形対称性の定義やその性質など、新しい場の理論の知見を得ることに成功した。また、共形場理論に現れるアノマリーに新しい性質のものが存在するのではないか?という観点からの研究もはじめている。 2の点に関しては、格子シミュレーションの専門家と共同で、QCDのカイラル対称性が過去に考えられていたSU(2)の対称性の回復に伴って、アノマリーで破れていたU(1)対称性も回復するのではないか?という知見を得て、それが共形場理論に対してどのように影響を与えるのか調べた。また、QCDの拡張としてフレーバーの数を増やしていった時にどのような性質の共形場理論が現れるのか、あるいは、高次元で同じようなことが起こるのかと言う観点からも数値的な理解を進めた。 3は現在進行中であり、既存の方法だけではなく新しいアイディアを取り入れてQCDの相転移の性質、とりわけ、その次数や臨界指数などを明らかにしていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的な観点からの共形場理論、及びQCDの解明はかなり進んでいると考えられる。特に、格子シミュレーションによって、U(1) 対称性が回復しているのではないか?と示唆されたことは今後のQCDの相転移の研究の重要な手がかりとなっている。 今後は数値計算を実行するためにコードの開発やモデルの選定に力を入れていきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
共形ブートストラップのプログラムをQCDの相転移に適用できるようにすることが一番大切である。一方で、理論物理として新しい相転移の可能性が議論されている種々の系に、共形ブートストラップからより深い考察を与え、自然界における臨界現象を明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は予定であったPCを購入しなかったため、来年度に繰越したい。
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