2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14311
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阿部 康志 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (10755531)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 稀少RIリング / 質量測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は理化学研究所のRIビームファクトリー(RIBF)において開発された、短寿命な原子核の質量を精密に測定する稀少RIリングにおいて、蓄積リングへの入射方式の改良を行い、測定効率を向上させることであり、その後、稀少RIリングを用いてNi同位体の質量測定を進めることで78Niの魔法数性を質量の観点から明らかにすることである。 当該年度は測定効率の向上のための手法開発に取り組んだ。稀少RIリングへ粒子を入射するにはパルス磁場を生成するキッカー電磁石を励磁する必要があり、そのトリガー信号はビームライン上流の検出器を用いて生成される。このトリガー信号に対して、飛行時間情報及びエネルギー損失の情報を用いて制限することによって粒子を選択し純度を向上させる。飛行時間情報は加速器に使用している高周波信号と同期するため、高周波信号に外部遅延を加えながら否定論路にて回路処理することにより、ある一定の飛行時間で到達する粒子のみを選択することに成功した。そして中性子過剰領域の原子核について10倍以上純度を向上させることができた。 またエネルギー損失の情報は検出器が出力する信号の波高を閾値により選択することで粒子選択を行うものであるが、ある程度の選択はできたが分離が不十分であった。これは検出器の性能に大きく左右されることが判明した。そのため、こちらについては高速応答かつエネルギー損失情報に対して高感度・高分解能な検出器の開発が不可欠であると判断した。 原理が実証されたため、この機能に特化したモジュールを開発中である。上記の粒子選択を遠隔による制御にて可能にするとともに、実験に必要な機能を標準搭載する予定である。また飛行時間情報による選択機能を用いて、Ni領域の測定を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は粒子選択システムの開発による測定効率の向上が目標の一つであった。その粒子選択システムの原理実証に成功し、飛行時間情報を用いた選択では純度を10倍以上向上させることができた。現在はそのシステムをより容易に利用するための機器開発を進めている。Ni同位体の測定についてはまだ開始されていないが、粒子選択システムにより純度を高めることが可能となり、74Niなどの核種については測定する準備が整ったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
原理実証を終えて、現在はこれらの機能に特化した専用の機器を開発中である。この機器は飛行時間情報による選択及びエネルギー損失情報による選択を遠隔で可能にするとともに、実験に必要な出力レートの調整や入力から出力までの遅延時間の調整を可能にする。また遅延時間は最短で15nsの予定である。これはキッカーの励磁までの時間に余裕を持たせるためである。この機器の開発はほぼ完了しているが、細かい部分で動作に不具合があるため、それについては修正中である。この機器が正常に動作すれば質量測定実験において粒子の選択を容易に行うことが可能となるとともに、稀少RIリングへの入射調整も容易となり実験時間を効率的に活用できる。この機器は平成30年度前半を目処に完成させる予定である。さらに秋頃にはこの機器を用いて測定対象粒子の純度を向上させ、74Ni周辺の原子核について質量測定実験を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は原理実証を主体とし、既存モジュール等で研究を実施したため。また、想定していたよりも実験時期が遅れたため。 原理実証を終え、専用モジュールの製作を進めているが、動作が完全ではないためその改良を行う予定である。またNiの質量測定実験を行うにあたって、粒子選択の際の信号を確認するためにネットワーク対応のオシロスコープを購入する予定である。また実験時に必要な検出器・回路についても購入する予定である。
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Research Products
(1 results)