2017 Fiscal Year Research-status Report
光の強度相関測定を活用したナノ領域の光と物質の相互作用の研究
Project/Area Number |
17K14321
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
秋葉 圭一郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80712538)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子ドット / 金属ナノ粒子 / レーザー顕微鏡 / ナノ光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる平成29年度は、研究実施場所の整備というゼロから研究を開始した。光学定盤を導入し、レーザー、分光器等を移設して実験環境を整備した。その後、ナノ領域の光と物質の相互作用を捉えるための顕微分光系を作製した。ここでは、励起レーザー光をガルバノミラーにより2次元スキャンできるようにした。コンピューター制御によりレーザーをスキャンしながら反射光および発光の強度を記録するプログラムを作成し、全自動でレーザー反射像およびレーザー励起発光像を取得できるシステムを構築した。金属微細構造のレーザー反射像を測定し、光学系および電気回路を最適化することで、最終的に、レーザースポット径を1μm以下と評価でき、また同じ画像を取得した際の再現性は非常に高く、再取得画像と元画像の間に本質的な違いは確認されなかった。これは設計した回折限界のレーザー顕微鏡を作製でき、研究の要となる装置が完成したことを意味する。 サンプルとする量子ドットと金属ナノ粒子のハイブリッド分子を効率よく作製するためには、ドットおよびナノ粒子の溶液濃度に対するガラス基板塗布時の面数密度の関係を調べる必要がある。そこで、構築したレーザー顕微鏡システムを用いて、金ナノ粒子(粒形:40nm)溶液をガラス基板に塗布した際の2次元空間分布を調べた。塗布にあたっては、滴下、滴下延伸、またポリマーを加えたスピンコートを試した。スピンコートにおいて濃度を10倍に薄めることで10分の1以下程度となる面数密度が得られ一定の制御が行えた。しかし、プラズマ親水化基板においても塗布する溶液によっては濡れ性が充分でない場合もあり、想定よりも制御性が低いことがわかった。一方で、ドット、ナノ粒子を親水化するために付着させている分子を利用し、化学反応によって比較的容易にハイブリッド分子を作製できる可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、研究実施場所の整備と実験装置の構築が最も重要な達成すべき課題であった。これについては、研究実施場所を整備して実験装置となるレーザー顕微鏡を組み上げ評価した結果、所望の精度が得られ、プログラムによる2次元像の自動取得が完成していることから、達成できたといえる。サンプル作製手法の確立については、期待していた程の制御性が得られないことがわかったため、必ずしも高確率でハイブリッド分子が得られるとは限らないが、一定の制御は行えていることからドットかナノ粒子の一方を非常に過多にするなどし、ハイブリッド分子に限定せずにナノ領域の光と物質の相互作用を捉えるという方針転換で対応できるに至った。また計画していなかった分子架橋による手法で比較的容易に作製できる可能性にも至った。当初の予定では、制御性によって高確率でハイブリッド分子が得られるドットとナノ粒子の面数密度の条件出しまでを行う計画であったが、この場合でもハイブリッド分子が得られたかどうかは、あくまで確率的であり実際に測定を行わない限り判別できないものであった。したがって、緻密な条件出しは不可能ではあったものの、より良い別の手法も検討でき、サンプル作製の指針が得られているという点から、全般としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ナノ領域の光と相互作用のない量子ドットのみのサンプルについて、分光器によるスペクトル測定および強度相関測定を行うことで、その特性を参照基準として捉えておく。ここでは、本研究で用いる手法となる強度相関測定の活用について、相関時間および相関形状を評価することで、実験的な基礎付けも行う。 次に、量子ドットと金ナノ粒子のハイブリッド分子を得られる確率が当初よりも低くなったために、ナノ領域の光と物質の相互作用を捉える観点にのみ着目した研究を優先して行う。金ナノ粒子が過多で量子ドットがひとつひとつ分散しているサンプルを作製し、スペクトル測定および強度相関測定を行うことで、量子ドットのみの先の実験との違いを調べる。これにより、目的とする強度相関関数の活用によってナノ領域の光と物質の相互作用が抽出できるかを実験的に検証する。 また、確率的なハイブリッド分子の作製が困難になる可能性があるため、これらと並行して分子架橋によるハイブリッド分子の作製法を試みる。ここでは、透過型電子顕微鏡によってハイブリッド分子作製の検証を行い、作製条件の最適化を行う。 最後に、いずれかの方法で得られたハイブリッド分子に対して実験を行う。これにより明瞭にナノ領域の相互作用を捉え、その知見を得る。また理論予測のあるファノ共鳴領域でのナノ領域特有の相互作用による光子統計性の変化について検証を行う。
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