2017 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属酸化物における2次元電子系に働く多体間相互作用の解明
Project/Area Number |
17K14325
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
湯川 龍 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任助教 (40759479)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 酸化物 / バンド構造 / 量子化 / 電子状態 / 多体間相互作用 / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、角度分解光電子分光(ARPES)から得られる電子状態と電気伝導特性の両観点から、遷移金属酸化物表面・極薄膜における2次元電子状態に働く多体間相互作用の起源を明らかにすることを目的としている。そのため、H29年度は電気伝導特性測定装置の開発に伴い、高品質遷移金属酸化物薄膜の作製とその表面に形成される2次元電子状態に働く多体間相互作用を電子状態の観点から解明する研究を行なった。具体的には次に示す研究を行なった。 1)レーザー分子線エピタキシー法によりLaAlO3 (001)基板上に高品質アナターゼ型酸化チタン(a-TiO2)薄膜を作製した。a-TiO2自体はワイドギャップの半導体であるが、Nbを微量ドープすることで、ARPES測定に於けるチャージアップを回避することに成功した。 2)作製したa-TiO2 (001)表面にK吸着させることで、a-TiO2表面近傍への電子ドープが可能であることを内核準位の光電子分光測定から明らかにした。K吸着量を精密制御することで、電子ドープ量に応じた電子状態の変化を捉えることに成功した。さらに、この電子ドープに伴い2次元電子状態が形成されることをARPES測定で確認した。 3)a-TiO2表面への電子ドープに伴い、2次元電子状態がポーラン状態から金属的な状態へ転移することを明らかにした。このことから、電子ドープに伴い電子格子相互作用が弱まることが明らかになった。 さらに、本研究を遂行するため、フェルミ面の自動測定プログラムや高効率データ解析プログラムを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料の作製から2次元電子状態の精密制御、さらに角度分解光電子分光測定による多体間相互作用の解明まで問題なく遂行されている。電気伝導特性を測定するための装置設計に関しても概ね順調に進んでいる。計測機器の選定に時間がかかってしまったため、遅れが生じた部分があるが、想定の範囲内である。残す計測機器と測定プログラムの作製が完了次第、電気伝導特性の計測を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は角度分解光電子分光測定で得られた多体間相互作用の知見を元に、遷移金属酸化物表面・極薄膜における2次元電子状態の電気伝導特性についての研究を遂行する。具体的には、電気伝導特性を測定するための装置を完成させ、遷移金属酸化物表面の2次元電子状態おける電気伝導特性の電子密度依存性を解明する。得られた電気伝導特性と電子状態の両観点から未解決の問題であった多体間相互作用の起源を明らかにする。同時に、新たな遷移金属酸化物極薄膜試料において同様の研究を展開することで、異なる試料における多体間相互作用について知見を得る。
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Causes of Carryover |
計測機器の選定が一部遅れたことから物品の購入を控えた。H30年度においては、電気特性測定装置の整備・調整を行う。
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Research Products
(5 results)