2019 Fiscal Year Annual Research Report
Direc observation of thermoelectric properties of surface Dirac states on topological insulators
Project/Area Number |
17K14329
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松下 ステファン悠 東北大学, 理学研究科, 助教 (90773622)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 熱電材料 / トポロジカル絶縁体 / ゼーベック係数 / 異常ホール効果 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、トポロジカル絶縁体(TI)の表面ディラック電子状態の熱電物性を明らかにすることを目的として、TI材料を高絶縁化・薄膜化することで伝導に対するバルクキャリアの寄与を抑制し、表面電子の熱電物性を直接観測・解明することを基本指針として研究を遂行した。 前年度までの2年間では、高バルク絶縁性を持つBSTS単結晶薄膜を作製し表面電子の熱電輸送の観測に成功した。その結果、一般的な金属の10~100倍程度の熱電性能を有すること、膜厚を数nmにすることで表面状態にエネルギーギャップを生じさせ、更に熱電性能が5倍向上可能なことを示した。また、更にバルク絶縁性の高いSn-BSTS単結晶の育成に成功し、薄膜化を要しない、数μm厚の劈開試料で表面が支配的な伝導を実現させた。 最終年度に当たる本年では、主にSn-BSTSを用いた熱電物性測定を遂行した。その結果、現在までの最高値であるグラフェンの熱電力を凌駕する熱電力を観測し、室温で他の2次元材料より高い熱電力を有することを実験と理論から示し、それらTI表面の高い熱電性能が、表面状態の特異な電子緩和時間のエネルギー依存性に起因することを明らかにした。 また、BSTS薄膜に関して、マイカ基板から容易に剥離できる特性を利用して強磁性絶縁体(FMI)上に薄膜を転写し、磁化による表面エネルギーギャップを実現し異常ホール効果の観測に成功した。 全研究期間を通じ、表面ディラック状態の熱電輸送観測に初めて成功し、他の2次元材料を上回る熱電性能を発揮し得ること、超薄膜化によってさらなる熱電性能の向上すること、それらが電子緩和時間に起因することを明らかにした。また、BSTS/FMI試料における異常ホール効果の観測は、この系での高い異常ネルンスト効果の発現を示唆するものであり、今後のTI材料の熱電デバイスへの応用の幅を大きく広げる結果であると評価している。
|