2017 Fiscal Year Research-status Report
共鳴X線散乱法による多重極子秩序形成過程の観測と実験設備の高度化
Project/Area Number |
17K14332
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
道村 真司 埼玉大学, 研究機構, 助教 (40552310)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 多重極子 / 共鳴X線回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はSmPd3S4の共鳴X線回折(RXS)実験を行い、低温(TN<2.6 K)における秩序に伴う共鳴信号を得ることができた。現在、秩序変数を決定すべく、その共鳴信号の解析を行っている。このSmPd3S4のみならず、来年度以降にDyPd3S4やTbPd3S4のRXS実験も予定している。ほとんどの希土類(=R)で多極子モーメントの秩序が予想されるRPd3S4の多極子秩序変数を系統的に調べることで、磁気秩序を引き起こす磁気双極子間相互作用(rank1)と四極子秩序を引き起こす電気四極子間相互作用(rank2)の関係など異なるrankの多極子間相互作用の関係を明らかにする。 一方、RPd3S4系においては、RXS実験による秩序形成過程のミクロな観測のほかに、PdをPtやAgで置換した試料の作製及びその磁化や電気抵抗、比熱測定を行っている。これは、置換により、異なるrankの多極子間相互作用の関係を変化させ、物性への寄与を明らかにすることを目的としている。これまで、Ce(Pd,Pt)3S4系で母体のCePd3S4とは全く異なる反強磁性強磁性秩序を発見したが、今年度はPt置換ではなくCe(Pd,Ag)3S4の試料作製及び物性測定を行った。その結果、Ce(Pd,Ag)3S4の物性はCe(Pd,Pt)3S4と似た置換依存性を示した。Ce(Pd,Pt)3S4で得られた反強磁性秩序は現れなかったが、Agの置換が30%まで進めば、反強磁性秩序が現れそうな置換依存性であった。また、PtとAgは化合物中で各々2価と1価イオンとして存在するはずであるが、物性への寄与に差異は現れなかった。また、四極子秩序温度の置換依存性は、置換率や格子の膨張率に依存しておらず、CePd3S4の四極子秩序が何に依存しているかは未だ不明である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
秩序形成過程のミクロに調べるRXS実験に関しては、解析に遅れがあるものの、共鳴信号を得ることができ順調である。一方、Ce(Pd,Pt)3S4及びCe(Pd,Ag)3S4に関しては、その物性測定によりCePd3S4の四極子秩序が置換率や格子の膨張率に依存していないことがわかったが、単結晶育成には成功していない。単結晶を得ることができれば、RXS実験により多極子秩序変数の変化を明らかにできるため、引き続き単結晶育成を試みる。しかし、Ce(Pd,Pt)3S4及びCe(Pd,Ag)3S4の研究に関しては、論文投稿等の成果発表を除き現状で90%程度完了しており、今後のPr(Pd,Pt)3S4などとの比較が重要になってくる。そのPr(Pd,Pt)3S4は今年度計画に試料作製と物性測定を据えていた。こちらは多結晶試料の作製を終えており、現在物性測定を進めている。やや遅れている部分もあるが、特に問題なく進めている。 一方、高圧下のRXS実験を見据え、今年度は磁化測定の圧力セルを購入した。本格的な運用は来年度以降である。高圧に関する実験環境整備は特に遅れはない。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に関して、特に変更の予定はない。一部遅れているRXS実験データの解析とPr(Pd,Pt)3S4の物性測定及び考察をしっかりと進める。
|
Causes of Carryover |
電気炉を譲って頂き、既製の電気炉の購入を取りやめたため。
|