2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14333
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多田 靖啓 東京大学, 物性研究所, 助教 (20609937)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カイラル超流動 / 軌道角運動量 / ディラック系 / 相転移 / 光渦 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前年度に予定していた通り、まず、カイラル超流動体における軌道角運動量についての論文を仕上げることに注力した。カイラル超流動体は、強磁性体の超流動版のような状態であり、磁化に対応する量である軌道角運動量について40年以上の研究の歴史があるにもかかわらず、未だに実験的にも理論的にもよく理解されておらず、この問題は「固有角運動量パラドックス」として呼ばれてきた。本研究で我々は、この問題の解決を目指し様々な議論や計算を併用し、包括的な理解の枠組みを提案した。論文の出版後、その内容の一部を日本物理学会誌にて解説した。
次に、前年度に開始したmagnetic catalysisの研究に関連して、磁場中の系についての議論の前提となる外部磁場のないときの系について、改めて研究を行った。この問題は、Dirac系における相転移の臨界性という一般的問題と関連している。我々は数値計算と解析計算を組み合わせた議論を行い、系の相図や臨界現象について明らかにした。今後は、ここで得られた知見をもとにして、磁場中の現象であるmagnetic catalysisについてさらなる研究を進める予定である。
これらとは別に、光渦と呼ばれるレーザー光を用いた磁性観測・制御についても研究を行った。光渦は光学の分野では非常に活発に研究されているものの、物性物理学への応用はほとんどなく、本研究は光渦の物性物理への様々な応用を議論したものである。そこにおいて我々は、適切に試料を加工して光渦を照射することで、物質の磁気的性質に直接的にアクセスできることを理論的に提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カイラル超流動の軌道角運動量に関する論文の執筆に時間がかかりすぎてしまった。この問題は40年以上の歴史のある問題であり、近年別の角度から改めて注目されていることもあり、議論すべき事柄も多く論文の執筆は容易ではなかった。
また、magnetic catalysisに関連した研究においても、当初からの予測とそれに基づく誤った先入観があり、正しい理解を得るまでに非常に長い時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、これまでに得られた結果を論文にまとめることに注力する予定である。その後、magnetic catalysisの研究を再開し、先行研究や実験との関連などを議論したいと考えている。また、軌道角運動量や光渦の研究に関連した新しい問題もあり、これらについても研究を行う。
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Causes of Carryover |
主に、購入を予定していたコンピューターの購入を延期したため、次年度使用額が大きくなった。次年度は延期した物品の購入を行う予定であり、計画的に助成金を使用していく考えである。
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