2017 Fiscal Year Research-status Report
Cd2Re2O7における空間反転対称性を破る相転移とスピン三重項超伝導
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17K14339
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北川 俊作 京都大学, 理学研究科, 助教 (50722211)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 低温物性 / 超伝導 / 高圧物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、空間反転対称性の破れを伴う相転移の量子臨界点で発現するスピン三重項状態を実験的に実証することである。今年度はその前段階として既にスピン一重項として知られているCeCu2Si2, UPd2Al3の超伝導状態の性質について調べた。 両物質とも超伝導状態でナイトシフト(スピン磁化率)は減少し、確かにスピン一重項超伝導が実現していると考えられる。また、ナイトシフトの減少量から見積もったパウリ臨界磁場は実験で観測されている上部臨界磁場とほぼ一致する。これは、両物質でパウリ対破壊効果が強く効いていることを示唆している。加えて、上部臨界磁場近傍では低磁場の超伝導状態と異なる超伝導状態となっていることも明らかにした。通常の非s波スピン一重項超伝導では超伝導状態でナイトシフトは減少し、核スピン-格子緩和率は単調に減少する。 UPd2Al3の上部臨界磁場近傍ではスピン一重項超伝導にも関わらず、超伝導転移温度以下でもナイトシフトが減少せず、NMRスペクトルの線幅が対称的に広がる。これは空間的に不均一な超伝導状態が実現していることを示唆している。 一方、CeCu2Si2では超伝導転移温度直下で核スピン-格子緩和率が増大する振る舞いを示す。同様の振る舞いは、有機物超伝導体κ-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2でも観測されておりFFLO状態の兆候と考えられている。本研究結果をまとめた論文はPhys. Rev. B誌、J. Phys. Soc. Jpn.誌で公表している。 以上のようにスピン一重項超伝導状態の理解が進んだため、これらの物質と比較することでスピン三重項状態の実証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試料を圧力セル中に入れて測定を行うとヒーティングがおき、核スピン-格子緩和時間の測定を上手く行うことができなかった。 現在、ヒーティングを抑えるために熱容量が小さい新型の圧力セルを設計し、そのセルを用いて測定を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく設計した新型圧力セルを用いて圧力下での超伝導状態の研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
圧力測定が進まなかったため。 圧力測定用の消耗品等を購入する予定。
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Research Products
(13 results)