2019 Fiscal Year Research-status Report
密度行列繰り込み群法の高度化―点群対称性への適応―
Project/Area Number |
17K14359
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上田 宏 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (40632758)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 密度行列繰り込み群 / テンソルネットワーク / 量子スピン系 / 対称性に守られたトポロジカル相 / 並列化 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,格子模型が持つ大局的な点群対称性に適応した行列積状態の構成法ならびに大規模並列化された密度行列繰り込み群法による状態の最適化手続きの高度化を行うことに加えて、密度行列繰り込み群を含むテンソルネットワーク法と相性の良い解析手法の開発を行うことで、量子多体模型に現れる非自明な相の数値的同定を達成することを目的としている。
本年度は、テンソルネットワーク法の一種であるiTEBD法並びに密度行列繰り込み群法を活用して、近年、擬一次元系のマルチフェロイクス物質との関連性から現在も非常に関心を集めている強磁性的最近接相互作用(J1)と反強磁性的次近接相互作用(J2)を持つフラストレート量子スピン1/2鎖は関して、容易軸、容易面のXXZ異方性、並びに、J1のボンド交替の自由度に対してスピンギャップと磁気的性質を広いパラメータ領域で調査した。容易軸側では既知の完全強磁性状態、部分強磁性状態、up-up-down-down反強磁性状態に加えて、2種類のトポロジカルに異なるダイマー相があることが分かり、その一方はSU(2)極限で現れる非常に小さなスピンギャップを持つハルデンダイマー状態と繋がっていることを示した。また弱いJ1のボンド交替はスピン相関のピッチを容易に4倍周期にシフトさせることも明らかにした。本模型の解析から、スピンギャップを持つ非磁性基底状態を持つ磁場誘起マルチフェロイクス物質Rb2Cu2Mo4O12の様々な実験的性質を理解するためには、フラストレートスピン鎖の間の反強磁性相互作用が重要であることを改めて示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
点群対称性に適応した密度行列繰り込み群の計算プログラムの開発そのものは遅れているが、密度行列繰り込み群ならびiTEBD法によって現実物質の非自明な基底状態と有効模型の量子相との関連性を詳細に議論する手続きに関する知見を得ることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
点群対称性に適応した密度行列繰り込み群の計算プログラムの開発を継続して行うのに加えて、初年度に達成したエンタングルメントスケーリングをBKT転移の同定に適用可能な形に拡張する仕事を継続して行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響もあり国内会議、国際会議の旅費を執行できなかったため。翌年度も同様の状況が続くことが予想されるため、今後は計算資源の確保に利用する。
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Research Products
(9 results)